中国向けEC、日本での努力カギ 水野真澄氏
中国向けEC、日本での努力カギ 水野真澄氏
水野コンサルタンシーホールディングス社長
中国向けの越境EC(電子商取引)の活況が続いている。市場規模は2019年に2兆円に達する勢いで、中国で商品を売りたい多くの日本企業が越境ECサイトに出店している。ただ出店すれば販売拡大が保証されるわけではない。商品の知名度向上など自ら売る努力が欠かせない。
経済産業省によると日本から中国に向けた越境ECの市場規模は19年に2兆77億円となる見込みで、17年に比べ5割以上増える。中国ネット通販大手、アリババ集団の「天猫(Tモール)」、中国ポータルサイト大手、網易(ネットイース)の「網易コアラ」といった越境ECサイトがあり、多くの日本企業がこれらのサイトに出店している。中国で会社を自ら設立する手間をかけず、巨大な中国市場に向き合える利便性がある。
中国政府も輸入手続きの簡略化や課税軽減などの優遇策を設け、越境EC市場を育成してきた。市場が一定水準に達した16年ごろから規制を強化しつつあるが、同年4月には約1300品目の商品の税率を優遇するリストを交付した。食品や衣服、家電製品や化粧品、紙おむつなど日本企業が優位性を発揮できる商品が少なからず対象となっている。
ただ中国の越境ECサイトに出店すれば商品が売れるというわけではない。各サイトには世界各国から商品取り扱いの要望があり、サイト側が商品を選べる立場にある。中国では小売り側の立場が相対的に強く、商品を売る努力をしてもらえないケースも目立つ。販売数量が基準に満たないとペナルティーの支払いを要求されることもあり得る。
日本国内で中国語のインターネット広告を出したり、中国からの観光客が訪問する免税店で商品を販売したり、中国を意識した対応は有効な方法のひとつだろう。
日本企業は過去数十年かけて、中国の巨大な市場を開拓しようと種をまいてきた。今後も中国で展示・販売会を開き、ECと実店舗との相乗効果を探るといい。中国で広く普及している交流サイト(SNS)を活用した広告も考えられる。越境ECという新しい動きに適切に対応し、収穫につなげてもらいたい。