さらに現実味を帯びた? 百家争鳴な海自空母導入の是非

さらに現実味を帯びた? 百家争鳴な海自空母導入の是非

 2018年3月20日(火)、自民党の安全保障調査会が、現在政府が進めている次期防衛大綱と中期防衛力整備計画の改訂作業に対する提言の骨子を発表しました。
Large 180327 cv 01 多用途防衛型空母への改修が検討されているヘリコプター搭載護衛艦「いずも」(竹内 修撮影)。
「防衛大綱」とはおおむね10年後までを念頭に置いて、どのような方針で防衛力の整備を進め、防衛省自衛隊がどのように活動していくかを定めたもの、「中期防衛力整備計画」は、防衛大綱の策定から5年間で、防衛大綱で定められた方針を実行するためにどんな装備を導入し、それをどう使うかを定めたものです。
 現在の防衛大綱は2014(平成26)年度に定められたものですが、北朝鮮核兵器や弾道防衛ミサイルなどにより、日本を取り巻く安全保障環境が一段と厳しくなっていることから、安倍晋三首相は2017年8月に小野寺五典防衛大臣へ防衛大綱の見直しを指示していますが、それとは別に自由民主党は与党の立場として、防衛大綱をどのようなものにすべきかの検討を行なっており、安全保障調査会の提言はそれをまとめたものです。
 この提言には注目すべき点が非常に多いのですが、提言の発表後、最も大きな反響を呼んだのは、おそらく「多用途防衛型空母」を導入すべしという項目なのではないかと思います。
 日本政府は1978(昭和53)年に、海上自衛隊保有できる空母と保有できない空母について、地上や艦船を攻撃する攻撃機を搭載する「攻撃型空母」は導入できないが、対潜ヘリコプターなどを搭載する「対潜空母」は導入できるとの見解を示しています。
 「攻撃型空母」「対潜空母」という分類はかつてアメリカ海軍が使用していたものです。すでにこの分類は使われておらず、2018年3月現在では意味を持たない言葉なのですが、今回の提言には同時にF-35のSTOVL(短距離離陸・垂直着陸)型のF-35Bを導入して、多用途防衛型空母に搭載することも含まれているため、かつての政府見解との整合性を持たせるため、あえて「防衛型」という文言を入れたものと思われます。
「多用途」について安全保障調査会は、大規模災害が発生した際に、ヘリコプターで負傷した被災者を輸送して治療する病院船の機能や、車両などを輸送する輸送艦の機能、海上自衛隊が運用している、洋上に敷設された機雷を除去するMCH-101掃海・輸送ヘリコプターを搭載する、掃海機母艦などの機能などを持つ艦と定義しています。