F35や空母化、政府は前のめり?

F35や空母化、政府は前のめり? (スグ効くニュース解説)
峯岸博編集委員

スグ効くニュース解説
2018/12/17 6:00
政府が最新鋭ステルス戦闘機「F35」の取得や、護衛艦「いずも」の空母化に熱心なのはなぜですか。

回答者:峯岸博編集委員 政府の背中を押したのは自民党です。政府が近く閣議決定する防衛力整備の指針「防衛計画の大綱」(防衛大綱)に向けて同党がまとめた提言は「戦後最大の危機的状況を迎えている」とし、安全保障の強化策を並べました。「いずも」の甲板を戦闘機が離着陸できる事実上の空母、「多用途運用母艦」に改修、戦闘機F35Bの取得、日本を標的とするミサイル攻撃が発生した場合、敵国の基地を直接たたく「敵基地攻撃能力」の保有の必要性などを訴えました。
護衛艦「いずも」は空母に?=共同
護衛艦「いずも」は空母に?=共同
「最近の自民党の若い先生は過激だ」。長く防衛政策に携わる政府関係者も驚くほどです。党内で影響力を持っていたハト派のベテラン議員が次々と政界を引退する一方で、「積極的平和主義」を唱える安倍晋三首相に呼応する若手議員が増えました。
自民党は、「いずも」を改修すればF35Bの搭載だけでなく、災害の救援や輸送など多用途に使えると説いています。世論の懸念を考慮し、敵基地攻撃能力の保有とともに大綱で見送られるとの見方もありましたが、政府は「F35Bを常時搭載はしないので、(保有できないとする)攻撃型空母ではない」との理屈で乗りきる構えです。
政府はF35を新たに最大100機取得する方針を与党に示しました。追加取得額は1兆円を超えます。米国の高額装備品では、長射程化したミサイルを搭載する陸上配備型のミサイルシステム「イージス・アショア」を購入する意向も米国に伝えました。対日貿易赤字に不満を抱くトランプ米大統領による「バイ・アメリカン(米製品を買おう)」の求めに、日米関係を重視する安倍政権が応じた形です。
北朝鮮米朝首脳会談後も核・ミサイルを手放さず、中国の軍拡・海洋進出とともに日本の脅威のままです。危機や災害への備えを怠るべきではありませんが、自衛隊の活動領域や巨額の装備品がなし崩しに拡大するのは望ましくありません。
巨額の装備品が日本の防衛にどれだけ役立つのか。事実上の「空母」導入とそこに搭載される最新鋭戦闘機が「必要最小限度の自衛」「専守防衛」という基本原則から逸脱しないか。国内外の視線が集まるなかで十分な検証と説明が必要です。
結論: 日本の安全保障や日米同盟の強化に向けた安倍政権の並々ならぬ意欲の表れです。ただ憲法との整合性や費用対効果など様々な問題が提起されています。