元徴用工に被爆者手帳認める 長崎地裁、朝鮮半島出身に初

元徴用工に被爆者手帳認める 長崎地裁朝鮮半島出身に初

1/8(火) 13:22配信

毎日新聞

 戦時中に長崎市三菱重工長崎造船所に徴用されて被爆したとして、90代の韓国人男性3人が、長崎市と国に被爆者健康手帳交付申請の却下処分取り消しなどを求めた訴訟で、長崎地裁(武田瑞佳裁判長)は8日、原告3人全員について市に手帳交付を命じる判決を言い渡した。原告の支援団体によると、朝鮮半島出身の元徴用工への被爆者手帳交付を命じた判決は初めてとみられる。

 訴状などによると、3人は1943、44年から同造船所に徴用され、米軍が長崎に原爆を投下した45年8月9日、造船所内や収容された長崎市内の寮で被爆したとして2015、16年に手帳交付を申請。しかし、既に原爆投下から70年が経過する中、3人は国側が求める被爆の証拠や証人を見つけることができず、市は「被爆したことを確認できる資料がない」などとしていずれの申請も却下した。

 原告は16年、却下処分は違法として取り消しを求めて提訴。昨年6月にあった証人尋問で「突然、空が真っ赤になり、ドカンという音がしてガラスが割れた」と証言するなど、被爆時の様子を語っていた。

 朝鮮半島出身の元徴用工を巡っては、同造船所が終戦時に帰国した約3400人分の未払い退職金などを48年に長崎地方法務局に供託した際に名簿が作成されたが、同法務局が70年に国の通達に反して廃棄した疑いが強いことが判明。名簿が残っていれば、手帳申請者が被爆した事実を証明するための有力な証拠になるため、原告らは「国が自ら名簿を廃棄しておきながら、証拠がないといって手帳申請を却下したのはおかしい」と訴えていた。【樋口岳大、今野悠貴】