「離檀料」請求でトラブル増加 改葬で1千万円要求も

「離檀料」請求でトラブル増加 改葬で1千万円要求も

2018/4/3 16:36
お墓を移したり、「墓じまい」をしたりする際、寺院から「離檀料」として高額のお布施を要求されるトラブルが増えている。数百万~1千万円を要求されるケースもあり、「支払う意味が分からない」などと困惑する檀家も。法的な支払い義務はなく、国民生活センターは「不当な請求に応じる必要はない。寺院側と話し合ってほしい」と呼びかけている。
「離檀料として1千万円を支払えと言われた」。寺院の事情に詳しい第一生命経済研究所の小谷みどり主席研究員は都内の80代男性からこんな相談を受けた。
男性の先祖代々の墓は都内の寺にあり、親類ら20柱が眠っている。男性の息子は外国籍でカトリックの女性と結婚したため、墓じまいを決意したが、寺院から「これまでの供養代」として離檀料を要求されたという。小谷さんは「離檀料を求める寺院が増えてきた」という。
国民生活センターにも同様の相談が増えている。同センターによると、墓じまいを決めた関東の70代男性からは「『離檀料として500万円を支払え』と言われた。相場を教えてほしい」との相談が寄せられた。
このほか北陸の60代男性は両親の遺骨を自宅近くの寺に埋葬したため、遠方の墓の墓じまいを住職に伝えると、離檀料として100万円を要求された。ところが後日になって「親戚がお世話になっているので50万円でいい」と"値引き"を告げられ、「値段があいまいで支払う意味があるのか分からない」と困惑した様子だったという。
離檀料トラブルが増加している背景には墓を別の場所に移す改葬の増加がある。厚生労働省によると、2016年度の改葬の届け出件数は約9万7千件で07年度から3割以上増加。実家にある先祖代々の墓を現在の居住地に移し、気軽に墓参りをしたいという人が増えているという。
ただ墓地埋葬法の規定で、改葬には寺など墓の管理者が記入する埋蔵証明などの書類をそろえて自治体に改葬許可証を申請する必要がある。国民生活センターの担当者は「寺院が協力しなければ許可証が出せないという規定を盾に取っているのでは」と首をかしげる
「離檀料は徴収していない」という見性院(埼玉県熊谷市)の橋本英樹住職(52)は「改葬されると檀家が減り、お布施収入が少なくなるため『最後の一稼ぎ』をしようとしているのではないか」とみる。高額の離檀料を要求する寺院について「遺骨を人質のように扱っている」と批判する。
一方、相談が寄せられている小谷さんは「離檀料は支払う法的義務はないが、お世話になったお礼という意味もある」と指摘する。国民生活センターは「請求された内容に納得できない場合、まずは寺院側と話し合ってほしい」とアドバイスしている。