リチウムイオン電池、発火相次ぐ 衝撃や過充電で

リチウムイオン電池、発火相次ぐ 衝撃や過充電で

2018/12/4 16:35 日本経済新聞 電子版
スマートフォンスマホ)や充電用モバイルバッテリーなどに搭載されている小型リチウムイオン電池が発火する事故が相次いでいる。東京都内では2017年までの5年間に168件の火災が発生した。落下させるなど電池への強い衝撃や、電圧の異なる電子機器に接続して起こる過充電などが主な原因で、東京消防庁は適切な利用を呼びかけている。
11月9日夜、走行中の東北新幹線はやぶさ」の車内で発煙事故が発生した。一部車両に煙が充満して列車は緊急停止し、「いきなり白い煙に包まれた」「怖い」などの投稿がSNS(交流サイト)上にあふれた。原因は乗客が持っていたモバイルバッテリーからの発煙。駆けつけた車掌が消火器で消し止めたが、「気分が悪い」と訴えた4人が病院に搬送される事態となった。
リチウムイオン電池はプラスの極にリチウム化合物、マイナス極に炭素を用いた充電池。繰り返し充放電でき小型化も可能なうえ、軽量で蓄電量が多いという特長を持つ。スマホなどの普及によって需要は拡大。業界団体によると17年に約13億個が販売され、海外からの輸入も増えているという。
ただ異常な過熱や出火リスクがあり、製品評価技術基盤機構(NITE)によると、リチウムイオン電池が原因の出火・発煙事故は17年度に全国で125件と4年前の約4倍に急増。東京消防庁の集計では17年までの5年間に都内で火災が計168件発生、重体1人を含む41人の負傷者が出た。モバイルバッテリーによる火災が最も多かった。
NITEで製品安全を担当する神山敦主査によると、発火の原因は電池に強い圧力や衝撃が加わったケースが多い。外部から加圧されると電池パック内の電極が触れるなどして電気系統がショートし発熱する。パック内の電解液は高熱に反応して可燃性のガスが発生。ケースが圧力に耐えきれず高温のガスが勢いよく噴き出し、発火に至ることがあるという。
バッテリーには過充電を防ぐ保護回路が搭載されているが、強い衝撃を受けると回路が壊れ、その状態で電圧の異なる電子機器などに接続すると過充電になって過熱し、発火することも多い。
15年には江戸川区の階段で男性が足を滑らせて尻もちをついた際、ズボンの後ろポケットに入れていたスマホのバッテリーが破損して出火し、やけどを負った。
神山主査は「発火などの事故が起きたリチウムイオン電池は、その前に突然電源が切れたり、外装が膨張したりするなどの兆候が見られることがある」と話す。東京消防庁はトラブル防止のため「異常を感じたらすぐに使用をやめ、製造会社や販売店に相談してほしい」と注意を呼びかけている。