白血病治療薬「キムリア」了承、米国で1回5千万円

白血病治療薬「キムリア」了承、米国で1回5千万円

 厚生労働省薬事・食品衛生審議会の再生医療部会は20日、免疫細胞を活用して若年性の白血病を治療する新製剤「キムリア」の製造販売を了承した。スイス製薬大手「ノバルティス」の日本法人「ノバルティスファーマ」が申請していたもので、厚労省は早ければ3月にも正式承認する見通し。米国では投与1回5千万円以上で、高額な価格と高い効果が国際的に注目されている。
 キムリアは、「CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)」を使ったがん免疫治療製剤。患者から採取した免疫細胞(T細胞)を遺伝子操作して体内に戻し、がん細胞を攻撃させる。特定の難治性の血液がんに対し、高い治療効果があるとされる。2017年に米国で実用化され、欧州でも承認されている。

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 臨床試験では、再発可能性や、抗がん剤が効きにくい難治性の「B細胞性急性リンパ芽球性白血病患者」(ALL)の約8割でがん細胞がなくなった。同じく難治性の「びまん性大細胞型B細胞リンパ腫患者」(DLBCL)でも約5割に治療効果が確認された。
 競泳女子のエース、池江璃花子(いけえ・りかこ)選手(18)が白血病と診断されて注目を集めているが、池江選手の病気の詳細が明らかになっておらず、新製剤の効果があるかは不明だ。

 製剤の副作用で、過剰な免疫反応を起こすサイトカイン放出症候群が起き、高熱や嘔吐(おうと)などが生じる場合がある。臨床試験では、因果関係が否定できない死亡例(脳出血など)が、ALLで2例、DLBCLで1例出ているという。
 国内で承認されればCAR-T細胞を使ったがん免疫治療製剤の第1号。投与対象となる患者はピーク時で年計約250人という。
 一方、足の血管が詰まる重症虚血肢の遺伝子治療製剤「コラテジェン」も、再生医療部会が同日、製造販売を条件付きで了承した。大阪大発ベンチャーアンジェス」が申請。血管再生などの作用を持つ遺伝子を患者の体外から入れ、症状を改善させる。正式承認されれば国内初の遺伝子治療製剤となる。

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 ■免疫療法
 体の中に侵入した細菌やウイルスなどの異物を排除する「免疫の力」を治療に使う方法。免疫が弱まれば薬を投与するなどして活性化。がん細胞が免疫細胞にかけるブレーキを外すことに着目したのが、ノーベル医学・生理学賞を受賞した京都大の本庶佑(ほんじょ・たすく)特別教授。免疫療法はがん治療として、手術、化学療法(抗がん剤)、放射線に次ぐ「第4の治療」として注目を集めている。