がん免疫療法、効果鈍らせる遺伝子 慶大が発表
がん免疫療法、効果鈍らせる遺伝子 慶大が発表
慶応義塾大の吉村昭彦教授は27日、体に備わる免疫の力でがんをたたく免疫療法の効き目を悪くする遺伝子を見つけたと発表した。この遺伝子が働かないマウスでは、免疫細胞ががんを効果的にたたき続けた。手術と抗がん剤、放射線に続く「第4のがん治療法」とされる免疫療法の効果の向上につながる。
米ラホヤ免疫アレルギー研究所との研究成果で、28日付の英科学誌「ネイチャー」(電子版)に掲載される。
がん免疫療法は体内の免疫細胞の働きを薬で活発にするなどしてがんを攻撃する。小野薬品工業の「オプジーボ」ががん免疫薬の代表格だ。末期患者の一部にも高い効果があるが、有効な患者は2~3割に限られる。免疫細胞が薬などの刺激を何度も受けるうちに疲弊し、働きが鈍るためとみられている。
研究チームはがんをたたく「T細胞」と呼ぶ免疫細胞の働きが鈍るときに活性化する「Nr4a」という遺伝子に注目。この遺伝子の働きを抑えたマウスの血液から免疫細胞を採取し、皮膚がんのマウスへ投与した。
普通のマウスから取った免疫細胞を投与してもがんの増殖を防げず、約20匹が90日後に全て死んだ。一方で、遺伝子の働きを抑えたマウスの免疫細胞を投与すると、7割以上が生き残った。遺伝子を働かなくすることで、免疫細胞の働きを弱める分子ができにくくなったためとみている。
ヒトで遺伝子を改変するのは難しいため、今後は企業と協力し、この遺伝子の働きを抑える薬の開発を目指す。がん免疫療法との併用で、効き目を改善できるとみる。