「スパイ部品」官民で排除 車や防衛、業界ごとに対応策

「スパイ部品」官民で排除 車や防衛、業界ごとに対応策

経済
2019/4/7 22:30 日本経済新聞 電子版
政府は民間企業と協力し、情報機器の部品などに特殊なソフトウエアを仕込むスパイ行為の排除に乗り出す。政府が月内にも対応指針をまとめ、自動車や防衛など各産業の企業と課題を洗い出して対策を求める。多様な機器がIT(情報技術)でつながり、情報流出やサイバー攻撃のリスクが高まっていることに対応する。米国や欧州との連携も視野に入れる。
半導体チップなど情報機器の部品を使うスパイ行為は「埋め込み型」と呼ばれる。製造、流通の各過程で問題のある部品が入り込むリスクを検証する必要がある。
まず内閣官房経済産業省総務省が中心となり、産業ごとに情報流出を防ぐための行動を指針としてまとめる。
そのうえで自動車、電力、防衛、スマートホームなど産業ごとに作業部会をつくる。それぞれサプライチェーン(供給網)を構成する企業が参加し、どこに懸念があるかを分析して対策を検討する。インターネット接続機能を備えるコネクテッドカー(つながる車)なら通信機器やソフトを手掛ける企業も加わる。
埋め込み型のスパイ行為をめぐっては、米ブルームバーグ通信が2018年10月、米軍や米中央情報局(CIA)向けにも納入する情報機器メーカーの製品に特殊なチップが組み込まれ、米アップルなど30社近くが情報流出の脅威にさらされていたと報じた。チップは中国の部品メーカーで組み込まれたという。
名前の挙がった企業は否定したが、日本政府は行政機関や企業が機器を調達する際の脅威になりかねないと警戒する。
政府調達に関しては、18年12月に決めた情報通信機器をめぐる指針で、通信回線装置やサーバー装置を対象にリスクがあれば排除する方針を確認した。
米国は中国によるスパイ行為の防止に向け、日本や欧州各国に協力を求めている。日本政府関係者によると、今回の日本の官民の取り組みに関心を示しているという。
米国は中国やロシアによる情報機器を通じたスパイ行為により、自国の安全保障が脅かされかねないと懸念を強めている。日本政府がつくる新指針を米国と共有するなど日米で連携を探る。日本政府は今回の枠組みを欧州連合EU)の関係機関にも説明している。