10年後は墓場行き、消えゆく6つのガジェット

10年後は墓場行き、消えゆく6つのガジェット

レコードプレーヤーやビデオデッキと同じ運命をたどるのは?

ILLUSTRATION: EDDIE GUY
 先日、2歳の息子に郵便で本が届いた。表紙の裏には、かつて革命を起こしたテクノロジーが付いていた。当然ながら息子はその光る物体が何か分からない。犬用フリスビー? ママがコーヒーカップの下に敷く物?
 「これはDVDよ」。その裏側をひっかいている息子に説明した。だが、すぐにどうでもいいと思った。いずれにしろ、DVDを再生する機械は家にはないのだから。
 1週間後、息子は祖父母の家で長方形のブロックを見つけ、それを積み上げて遊んでいた。VHSテープだった。
 技術の進歩は、かつての画期的なイノベーション(技術革新)を奇妙な遺物へと変貌させる。幼い息子と接しながらそれを実感するたびに、「次は何か?」と考えずにはいられない。現在のテクノロジーのうち、息子がそれを使える年齢になるころ、つまり今から10年後には、どれが姿を消しているのだろうか?
 未来を予測するのは難しいが、「パーソナルコンピューターの父」と呼ばれるアラン・ケイ氏は、どのテクノロジーが廃れるかを判断するには次の2つが必要だと話す。「1つは、どんな技術的進歩が実際に射程内あるか。もう1つは、人々がその進歩を習得し、関心を持てるかどうかだ」
 未来学者やエンジニア、IT(情報技術)起業家の助けを借り、筆者の息子が将来は目にしないだろう6つのテクノロジーを予想してみた。もし間違っていたら、2030年に筆者の「ネットにつながるコンタクトレンズ」にメッセージを送ってほしい。
コードと端子
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Photo: Eddie Guy

 息子にとってのより良い生活を常に思い描いてきたが、それが到来しつつある。われわれはいずれ、充電ポート付きのスマートフォンや煩わしい充電コードや充電アダプターに別れを告げることになる。こう話すのは、次世代ワイヤレス給電規格の標準化団体「エアフューエルアライアンス(AirFuel Alliance)」の代表を務めるサンジェイ・グプタ氏だ。

 「自宅や車、オフィスには全てワイヤレス充電器が組み込まれるようになる」と同氏は予想する。一部の低電力デバイスWi-Fiのような無線経由で充電できるようになる可能性があるが、他の大半の機器は充電パッドに置くようになる。現在のワイヤレス充電技術は給電力が低く、デバイスを充電器の決まった場所に置く必要があるといった難点があるが、グプタ氏はそうした問題は解決されるとみている。
クレジットカードと鍵
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Photo: Eddie Guy
 「ICチップ付きのクレジットカードなんて懐かしくない?」。われわれはディナーパーティーで笑いながらこう話すようになるだろう。実店舗での支払いはスマホやスマートグラスを介したモバイル決済になるか、店側が顔認証やその他のセンサーを使用して客を認証し、課金するようになるだろう。現在サンフランシスコやシアトルなど米国の一部都市で運営されている「アマゾン・ゴー」を見てみればいい。同ストアには至る所にカメラやセンサーが設置されており、客が入り口でスマホをスキャンすると、その人が店で何を購入したかを追跡する。客が購入品を持って店から出るとアマゾンのアカウントに自動的に課金される。
 インテルラボの責任者を務めるリッチ・ウーリグ氏は、同様のテクノロジーが自動車やオフィスにも適用され、物理的な鍵に取って代わるとみている。「センサーデータと組み合わせれば、出入りする人を非常に正確に特定できるようになる」と同氏は述べる。「それが安定して可能になれば、物理的な鍵はさほど重要ではなくなる」
特大のスマホ
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Photo: Eddie Guy
 携帯電話は当初は分厚く、やがて小型化され、今は非常に大きなスペースを占めるようになっている。だがいずれ人間の手に合った大きさに戻るだろう。次の2つのテクノロジーがそれを可能にすると専門家は予測している。折り畳み可能な柔軟性のあるディスプレーと拡張現実(AR)技術を搭載したウエアラブル端末だ。
 アラン・ケイ氏は「将来、メガネやコンタクトレンズが個人のディスプレーとなり、ほとんどの物の表面が公共のディスプレーとして使用されるようになる」と話す。地図や動画、メールを見るには、ポケットに辛うじて収まる大型スマホではなく、これらのディスプレーに頼ることになるだろう。
 スマホ自体には、折り曲げたり畳んだりできるディスプレーが搭載されるだろう。サムスン電子の「ギャラクシーフォールド」は発表を数年早まったかもしれない。
カメラ専用機
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Photo: Eddie Guy
 今後10年以内に、カメラ専用機を使うことはレコードに針を落とすのと同じくらいレトロな行為に見えるようになるだろう。マルチカメラ画像技術を開発するライト社の共同創業者であるデーブ・グラナン最高経営責任者(CEO)は、スマホや衣服、壁などあらゆる物に小型カメラが組み込まれ、写真が撮られるようになると話す。それら画像を高度な人工知能(AI)を使用して組み合わせ、超高解像度の写真を作り上げる。最近ブラックホールが撮影された仕組みと似ているが、こちらは世界中の電波望遠鏡をつなぎ合わせるような壮大なものではない。
 「『私のカメラはどこ?』と聞かれたら『どこにでも』と答えるようになる」とグラナン氏は言う。こうしたマルチカメラは、自撮りのホログラム映像などARグラスを使用して見る3次元(3D)画像の作成にも使用される。現在構築中の第5世代移動通信システム(5G)ネットワークによって、この仕組みはシームレスに機能するようになるだろう。
居間に置かれた各種装置
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Photo: Eddie Guy
 ケーブルテレビのセットトップボックス(STB)は既に自らの運命を悟っているが、ゲーム専用機や動画ストリーミング端末も葬式の準備をしておくべきだ。グーグルの「ステイディア」は、
 何が居間から姿を消すかを予想する上で大きなヒントになる。ゲームは、DVDドライブが付いたグラフィックス性能の高い専用の端末ではなく、クラウド経由でプレーするようになる。安定したインターネット接続環境と「クロームブラウザーさえあればゲームをストリーミングできる。
 こうしたサービスは2019年後半には始まるとされているが、ゲームやサービスのエコシステムの進化には向こう10年かかるだろう。マイクロソフトも同様の動きを見せており、「Xboxエックスボックス)」の最新モデル「One S(ワンエス)」ではディスクドライブを排除している。
 「アップルTV」や「ロク」などの動画ストリーミング端末は、ビデオデッキやDVDプレーヤーと同じく天国へと旅立つことになるだろう。既にテレビ自体にストリーミング用の基本ソフト(OS)が組み込まれつつあるためだ。
スマートスピーカー
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Photo: Eddie Guy
 スマートスピーカーには、クロックラジオと同じような未来が待ち受けている。マイクやスピーカー、音声アシスタントは家電機器や車のダッシュボード、コンピューター、メガネ、シャワーなど身近な物に組み込まれるようになる。
 「10~20年後には、家電機器は音声だけで操作できるようになるだろう。洗濯機に近づき、『大量洗い』と指示すればいい」。かつてアマゾンでアレクサ関連製品チームの責任者を務め、現在は音声アプリ開発を支援するウイットリンゴを経営するアハメド・ブジド氏はこう話す。
 ブジド氏はまた、周囲にある物理的な物がわれわれに話しかけ、故障の原因や使い方を教えてくれるようになるとも予想している。「プリンターが『シアンのインクが切れそうです。補充していただけると有り難いのですが』と教えてくれるようになるだろう」
 残念ながら、息子が大きくなってもプリンターは残っているようだ。