レアアースの生産、中国になぜ集中?
レアアースの生産、中国になぜ集中? (スグ効くニュース解説)
小玉祥司編集委員
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2019/6/27 6:00
日本経済新聞 電子版
回答者:小玉祥司編集委員 レアアースは、ネオジムやジスプロシウムなど化学的な性質が似た17種類の元素をまとめて呼ぶときの名前です。中国が生産の7割を占め、特に高性能磁石を作るのに欠かせないジスプロシウムなどは中国のシェアが高くなっています。これは中国がとても安くレアアースを生産できるためです。
じつはレアアースが地球上に存在する量は、決して少なくありません。地球表面の地殻に存在する元素の比率で見ると、代表的なレアアースのネオジムは27ppm(ppmは100万分の1)で、日常的に使われている銅の28ppmとほぼ同等です。高性能磁石に欠かせないジスプロシウムは3.9ppm。金(0.0015ppm)の3000倍多く存在しています。
ところが中国には「イオン吸着型」と呼ばれる特殊なレアアースの鉱石が存在します。この鉱石はジスプロシウムなどを多く含み、硫酸アンモニウムという化学薬品をかけるとレアアースの原料になる酸化物を容易に取り出すことができます。このタイプの鉱石は花崗岩が変化してできたと考えられていますが、中国以外ではまとまって見つかっていません。
さらに酸化物からレアアースを取り出すためには、化学薬品を使って処理する必要があります。次第に規制が厳しくなってきていますが、従来、中国では環境への悪影響をあまり気にせずに危険な化学薬品も使うことができました。鉱石からレアアースの原料を取り出し、さらに化学薬品で処理するコストが大幅に安かったので、中国が世界市場で高いシェアを占めているわけです。
中国とは鉱石のタイプが違いますが、レアアースの鉱山はカナダやオーストラリア、米国などにも存在します。通常なら中国産に太刀打ちできませんが、価格が上がると中国以外の鉱山も経済的に成り立ちます。過去に価格が高騰したときには、米国で休止していた鉱山を再開する動きも出ました。レアアースの埋蔵量は年間需要の約650年分以上と見積もられていて、価格変動はあっても石油のように枯渇する心配はありません。
結論:中国にはレアアースを取り出しやすい鉱山が多いうえ、環境問題をあまり気にせずに精製できる面があります。このため価格が安く、高い世界シェアを占めているわけです。ただ資源としてのレアアースは中国に限らず豊富で、枯渇する心配はありません。
あすでスグ効くニュース解説は最終回です。テレワークを考えます。
小玉祥司(こだま・しょうじ)