米空軍、レーザー兵器でのミサイル迎撃に成功 21年に戦闘機に搭載へ

米空軍、レーザー兵器でのミサイル迎撃に成功 21年に戦闘機に搭載へ

May 10 2019
US Air Force / flickr
 戦闘機がミサイルの脅威から解放されるという新たな時代が近づいている。米空軍研究所は、レーザー兵器によるミサイル撃墜試験に成功したと発表した。装置は将来的に戦闘機に搭載される計画で、空中戦の様相は一変すると複数の米専門メディアが伝えている。

♦︎高出力レーザーで迎撃
 米空軍研究所は3日、レーザー兵器の実験的システムにおける初期段階のテストに成功し、ミサイルの撃墜に成功したと発表した。実験はニューメキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル実験場で4月23日に行われ、空中に発射された複数のミサイルを地上のレーザー装置から発射された高エネルギーレーザーが撃墜した。兵器は、米空軍が推進する自己防衛高エネルギーレーザー実証プログラム(SHiELD)の一環として、米ロッキード・マーティン社と共同で開発が進められている。

 今回の初期試験では地上の装置からレーザーを発射したが、将来的には戦闘機への搭載が計画されている。小型化を進め、F-15戦闘機に搭載することが今後の目標だ。2021年までに戦闘機への搭載試験を行う計画で、実現すれば地対空および空対空ミサイルの脅威から戦闘機を保護することが可能になる。ロッキード社のほか、米ボーイング社および米ノースロップ・グラマン社がそれぞれ異なる部材の開発を担う。

♦︎空中戦の様相は一変
 レーザー光線によるミサイル撃墜は、状況を一変するほど革新的な技術になり得る可能性がある、とデフェンス・ニュース誌は指摘する。空中発射レーザーの実現は米空軍の長年の悲願だった。実用化すれば、戦闘機の脅威であるミサイルを、既存の迎撃手法よりも大量かつ安価に破壊できる。ロッキード社のレーザー兵器担当者は、これまでは小型化が課題で実現が困難だったと語る。しかし、光ファイバーをレーザー媒質として利用するファイバーレーザー技術の進歩により、実現の目処が立った。消費電力は最小限に抑えられており、かつ廃熱量も小さい、と担当者は長所を強調している。

 ポピュラー・メカニクス誌は、SHiELDが実現すれば空中戦にもたらす影響は甚大だと予測している。現状では、空対空ミサイルからの防衛手段としては、追尾ミサイル向けにダミーの熱源を散布するフレア、レーダーを阻害するチャフ、そして電磁波を妨害する電子攻撃の3タイプが主流となっている。これらはいずれも消極防御であり、ミサイルそのものに作用しないと同誌は指摘する。今回実験に成功したレーザー兵器は積極防御にあたり、従来手法とは一線を画する。具体的にレーザーがミサイルを無力化する手法としては、赤外線検知器の破壊により追尾性能を喪失させる、ミサイル本体や動翼を損傷させ飛翔不能にする、あるいはレーザー光の熱エネルギーで動力部または弾頭を発火させる、など多数のシナリオが考えられるという。

♦︎実用化へ一歩ずつ
 ただし、今回の実験は成功したと伝えられているものの、その詳細は現時点で明かされていない。空軍研究所の発表文には「飛行中の複数のミサイル」を撃墜したと表現されているが、具体的にどのようなタイプのミサイルで試験を行ったかは不明だとエアフォース・マガジンは指摘する。

 ディフェンス・ニュース誌はロッキード社の担当者に出力ワット数や射程などを質問したが、具体的な回答は得られなかった。また、米空軍研究所は詳細なテスト内容を公表していない。今回はまだ初期のテストが成功した段階であり、実戦配備にはしばし時間を要しそうだ。