おいしいものにも毒がある ~ジャガイモのキケン~

おいしいものにも毒がある ~ジャガイモのキケン~

いま、「ジャガイモ」が世間をにぎわしています。小学生13人がジャガイモが原因とみられる食中毒で救急搬送されたのです。有毒な植物を食べて亡くなった人は、10年間で12人。身近な食べ物にも危険は潜んでいます。
(ネットワーク報道部記者 飯田暁子 和田麻子 目見田健)
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児童13人が救急搬送

小学校内の畑
それは9日、兵庫県宝塚市の小学校で起きました。
校内の畑で収穫したジャガイモを食べた児童13人が、食中毒とみられる症状を訴えて救急搬送されたのです。
「芽は危ない」などとよく聞くジャガイモなのに、なぜこんな事態になったのでしょうか。

有毒植物の食中毒、最多はジャガイモ

ピンとこない私は食中毒の発生状況を調べてみました。

すると厚生労働省のホームページに驚きのデータが…
「有毒植物の食中毒」のページ。平成30年までの10年で、患者数がダントツに多いのがなんとジャガイモ。346人に上っていました。
農林水産省のサイトも10日に更新されたばかりで、ジャガイモの食中毒に注意を促していました。
宝塚市の小学校の事案を受けてのものかと聞いてみたところ、こんな回答が。
「毎年、学校の夏休み前のこの時期に行っているんです」
ジャガイモの食中毒は、学校で春に植えたものを収穫し、調理実習で食べる今の時期に増える傾向があるそうです。
「農家の栽培したジャガイモとは違い、学校で育てたジャガイモは、しっかりと育たなかった小さいものや、土から出て光が当たり緑色になったものなどが時々あるんです。それを口にすると食中毒となる可能性があります」(担当者)
このため、毎年、この時期に注意喚起を行っているそうです。

どの部分に注意?

では、どこに気をつけたらいいのか、農林水産省の担当者に聞きました。
▽ジャガイモで注意する部分は?
「天然の毒素の“ソラニン”や“チャコニン”が多く含まれる芽とその根元」
芽が出たジャガイモ
「光が当たって緑色になった皮の部分です」
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左が緑色になったジャガイモ
▽どうすれば食中毒を防げる?
「保存は、暗くて涼しい場所で。さらに長期保存を避け、必要な量をそのつど買うことが望ましいです」

▽調理の際の注意点は?
「芽があればその周りの部分を含めて取り除く。皮に緑色の部分があれば、皮を厚めにむく」

▽その他注意点は
「店先で売られているジャガイモより、小さいものは食べない」

ジャガイモに毒「知らなかった」

ジャガイモに天然の毒素があることについてネット上では、「ジャガイモで食中毒って初めて聞いた」「緑のところが危ないとは知らなかった」といった驚きの声もありました。

また、職場の農場でジャガイモを栽培したものの、小さいものしか収穫できず、
「成長不良のジャガイモを食べて食中毒になったニュースがあり、危険だったので私たちも全て廃棄に。残念でした」というツイートもありました。
さらに調べてみると、ジャガイモ以外にも身近なものに危険が潜んでいることがわかりました。

身近な植物で12人死亡

厚生労働省によりますと、去年までの10年間で誤って有毒な植物を食べて下痢や吐き気などの症状が出た患者の数は、全国で合わせて780人。亡くなった人は実に12人にのぼります。
有毒植物による食中毒発生状況(厚生労働省まとめより)
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致死量は4.3ミリグラム?

このうち、死亡したケースが最も多かったのが、園芸用として広く栽培されているイヌサフランです。
イヌサフランの葉(有毒)
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10年間で8人が亡くなり、ことしに入っても、少なくとも2人が死亡しています。
実は葉や球根には、“コルヒチン”という毒性成分が大量に含まれていて、誤って食べると、おう吐や呼吸困難を引き起こし、重症化した場合は死亡することもあります。
体重50キロの人の場合、“コルヒチン”4.3ミリグラム程度で死に至ることがあるというのです。
そして誤って食べてしまうことが多いのは理由があります。

あれにもこれにも、よく似ている

ことし4月、群馬県渋川市で72歳の男性が知り合いから譲り受けた有毒の「イヌサフラン」を食用のギョウジャニンニクと間違えて食べ、下痢やおう吐などの症状を訴えたあと病院で亡くなりました。
ギョウジャニンニクの葉(食用)
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また、去年7月には北海道の80代の女性が、自宅の敷地に生えていた「イヌサフラン」の球根を、“イモ”と間違えて食べて亡くなっています。
イヌサフランの球根(有毒)
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イヌサフラン」は、葉の形がギョウジャニンニクなどと似て間違えやすいほか、球根をジャガイモやタマネギなどと誤って食べてしまうケースが多いのだそうです。

発生多い北海道では

北海道では例年「イヌサフラン」などの有毒な植物を山菜と間違えて食べて食中毒となる人が相次いでいます。
去年までの5年間で食中毒が15件発生、6人が死亡しています。

北海道庁に聞くと、危険なのは植物の芽や葉が出始めたばかりの、まさに「山菜採りシーズン」。この時期に毒のある植物と食べられる植物を見分けるのは難しいそうで「はっきりわからないものは食べないで」と呼びかけています。

また、庭に観賞用に植えた「イヌサフラン」や、やはり毒性成分のあるスイセンを、ギョウジャニンニクなどと勘違いして食べてしまうケースもあるそうです。

観賞用と家庭菜園用の球根や苗は分けておくこと、植えたら植物名の看板を立てるなどしてわかるようにしておくことが大切と呼びかけています。

北海道庁では山菜と間違えやすい有毒な植物をまとめた「毒草ハンドブック」を作成し、道立保健所で配布しているほか、道のホームページにも載せています。
毒草ハンドブック(北海道庁
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自分で育てたジャガイモ、野山で採ってきた山菜は、味も格別。でも一歩間違うと、大変なことになります。身近な植物の食中毒、ご注意ください。