オナラの臭い、音、回数…|オナラの真実、理想のオナラとは

オナラの臭い、音、回数…|オナラの真実、理想のオナラとは

 人前でオナラが出そうな時、がまんするのがマナーではある。しかし、ため込み続けたそのガスは、口臭や体臭、肌荒れの原因となり、最悪の場合、がんをも招く恐れがある。
「臭う」か「無臭」か、「多い」か「少ない」か、「理想のオナラ」の謎に迫る。
女性がお尻を手で押さえる画像
臭い、音、回数でわかるオナラの真実とは?(写真/PIXTA
 今年3月にビオフェルミン製薬が公表した、全国男女1000人を対象にした「おなかケア」のアンケート結果によると、便秘症状がある女性のほぼ半数にあたる44・3%が、「オナラが頻繁に出る/臭くなる」ことに悩んでいると答えた。
 オナラに悩むのは女性だけではない。
《一日100回くらいオナラが出る》
 ツイッターでそうつぶやいたのは、ZOZOの前澤友作社長(43才)だ。 前澤社長は、オナラの回数のあまりの多さに悩み、病院で受診したところ、医師から「健康な証拠です」と一笑に付されたという。
 しかし、『新しい腸の教科書』(池田書店)の著者で、江田クリニック院長の江田証(あかし)さんはこう指摘する。
「健康な人のオナラの回数は1日平均10~15回ほど。20回以上出る人は危険信号です」
 臭い、回数、音…。人知れず多くの人を悩ませる、オナラの真実に迫ってみよう。

臭いオナラがよく出る人はたんぱく質の食べ過ぎ

 そもそもオナラはどのように生じるのか。口から食べたものは胃から小腸に運ばれ、小腸で消化分解されなかったものは大腸へ行く。大腸に100兆個も存在するといわれる腸内細菌によってさらに分解され、その際に発生したガスがお尻から外に出たのが「オナラ」だ。
 口からの呼吸でのみ込んだ「空気」もオナラになるとの俗説もあるが、5万件以上の大腸内視鏡検査を誇る、新宿大腸クリニック院長の後藤利夫さんは否定する。
「口から入り込んだ空気は胃に到達すると胃袋が張り、その空気はゲップとして体外に放出されることはありますが、のみ込んだ空気が小腸と大腸を通過してお尻から出ることはありません」
 オナラというと、最も気になるのは「臭い」だ。
 大腸の腸内細菌は、主に炭水化物を分解する善玉菌(乳酸菌やビフィズス菌など)と、主にたんぱく質を分解する悪玉菌(大腸菌ブドウ球菌など)に大別される。
 後藤さんは、「問題は悪玉菌」と指摘する。
「悪玉菌が『たんぱく質』を分解すると、窒素酸化物や硫黄酸化物など強い臭いを含むガスが発生するのです。窒素酸化物はディーゼルエンジンのガス臭、硫黄酸化物は卵の腐ったような臭いがします」
 悪玉菌が特に好むのは、肉や卵などの高脂肪、高たんぱくの食べ物だ。
ぶ厚い生の牛赤身肉
肉や卵などたんぱく質の摂りすぎに注意(写真/アフロ)
「ボディービルダーは筋肉を作るために高たんぱくのプロテインをたくさん摂取します。そのため、ボディービルダーのオナラはすごく臭いことで有名です」(江田さん)
 もちろん、たんぱく質は人間の体に欠かせない栄養素だが、臭いオナラが過剰に出る人は悪玉菌の働きが活発になっていると覚えておきたい。

高齢者ほどオナラが臭くなる傾向がある

 さらには、健康上、こんな危険もあるという。
「腸内の悪玉菌が活性化されると免疫機能が低下して、さまざまな病気になるリスクが増します。さらに悪玉菌がたんぱく質を分解する時に、ニトロソアミンなどの発がん性物質を発生するため、最悪の場合は大腸がんになる原因となります。さらに肝臓が悪い人は、悪玉菌の働きで発生したアンモニアが肝臓で分解されず脳に回って、意識がもうろうとしてしまう『肝性脳症』を起こすケースも。善玉菌は年齢とともに減少し、悪玉菌が増えるため、高齢者ほどオナラが臭くなる傾向もあります」(後藤さん)
 オナラの「回数」はどうだろうか。それは食事量と“消化力”で決まると、後藤さんは続けて指摘する。

オナラの回数が多い人は食べ過ぎが原因

「食べ物の消化をサポートする『消化酵素』が胃腸にはありますが、消化酵素の能力を上回る量の食べ物を摂取すると、小腸で栄養分を吸収しきれず、余分な栄養が大腸に到達して、ガスが発生するもとになります。オナラの回数が多い人は、食べすぎが原因なのです」
 暴飲暴食は生活習慣病などにつながるというが、オナラの回数が多い人ほど要注意ということだ。「一日オナラ100回」の前澤社長は高級グルメをがまんするべきかもしれない。
 また食物繊維は小腸で吸収されにくく、主に大腸で分解が行われるため、いもやごぼうなどの食物繊維を多く含む食べ物も、オナラの回数アップの要因となる。
膨れたお腹を両手で押さえる女性
「オナラ」が出ず、お腹が張っている状態が最も危険(写真/PIXTA
 ただし大腸で食物繊維を分解するのは善玉菌のため、臭いはなく、臭いオナラと比べれば、健康にも大きな支障はない。
「とはいえ、食べすぎは胃腸への負担が大きいので、注意しましょう」(後藤さん)

肛門の筋肉に力をいれ、少しだけ開いてゆっくり出すようにすると消音できる

 女性にとってセンシティブな問題である「音」はどうだろうか。
「音は肛門の振動によるものなので、健康との直接的な関係はありません。ガスを勢いよく噴出するのではなく、肛門の筋肉に力を入れ、少しだけ開いてゆっくり出すようにすれば“消音”できます」(後藤さん)
 臭い、回数、音と悩みは尽きないが、それ以上に、「出ない」ことは危険の兆候となる。
「特に注意したいのは、便秘でお腹が張って苦しいのに、オナラが出ないケースです。いつもお腹が張っている人は、そのガスが水に溶けて大腸で吸収されると、口臭や体臭、肌荒れの原因にもなります」(後藤さん)

規則正しい睡眠と運動がガスたまりの予防に

 オナラが出なくても、腸内細菌はガスを大量に作っている。さらにそれが悪玉菌の場合は、前述したような免疫機能の低下や大腸がん、肝性脳症といった重病のリスクもあるので気をつけたい。
 腸内活動を刺激して、ガスがたまるのを避けるには「運動」と「睡眠」が重要だ。
「スポーツ競技のような激しい運動は腸の動きを止めやすいので、1日1万歩程度のウオーキングやヨガなどがおすすめです。また腸内活動は、副交感神経が優位になる睡眠中に最も活発になるので、規則正しく充分な睡眠が効果的です」(後藤さん)
※女性セブン2019年8月8日号