エマの慟哭...第一巻、第二巻、最終章、連続掲載(^O^)

黙ってニコニコしながら旦那さんにお酌するエマ・・・
すでに蓄えは底をついていた。
「エマ!モウ一本つけろぉ(`o´)」
もうご近所の酒屋さんでツケで売ってくれるところはない・・・
嫁入り道具はあらかた質入れしていた。
「ごめんなさい。今日はこれしかないの。。。」
エマは、申し訳なさそうに言った。

彼は売れない作家だった。
でも、才能は凄いものを持っているとエマは思っている。
エマは彼が書き上げる作品を、誰よりも早く読むのが楽しみだった。
彼の作品は生真面目過ぎた。
売れるものを書くには、多少人格が壊れていたほうが良い・・・タスケノヨウニ
「そうだったねエマ、無理を言ってすまない...」
明朝、講談社に新作を持っていくことになっていた。
「きっと気に入ってくれるさ!(`o´)」
「あなた、これ・・・」
エマはそっと一文銭を差し出した。

「エマ!(¨)」
「家にまだこんな大金が・・・」
「あなたが、編集長さんと茶店に入ったら、コーヒー代くらいないと・・・」と、エマはやさしく言った。。。
「うううぅぅぅぅぅ」彼は泣いていた。
「さぁ、もう寝ましょ」エマはさりげなくウインクをした。。。
「あぁ、これがなくなったら俺も床にはいるよ」
彼はそう言うと涙を袖で拭いた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
しばらくすると、一文銭を手に握りしめ、酒屋へつづく夜道を急いでいる彼の姿があった。。。

{エマの慟哭}第一巻・・・おわり
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酒屋の明かりが見える。
「しめた、閉まってない!」(^^;
「はぁはぁはぁ・・・」
彼は息を弾ませ、酒屋の旦那に言った。
「さ、酒を売ってくれないか?」
旦那は彼を見て言った。
「金は持ってるのかぇ、もうツケでは売らないよ。」
彼は、握りしめた拳をそっと開いた。
・・・・・・
「なんでぇそれは!」
「今時、一文じゃたばこ一箱買えないよ!(`o´)」
邪険にそういうと、引き戸をガラガラと閉め始めた。
「ま、待ってくれ! 俺にとっては大金なんだ。」
「後生だから・・・一合でいい・・・」
店の明かりが消えた...

エマの慟哭}第二巻・・・永久におわり
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それから数年後...
皐月賞じゃなくて、芥川賞受賞の記者会見場に彼がいた。
新鋭の作家として見事芥川賞に輝いたのだ。
晴れ晴れとした笑顔の彼の後ろに、そっと涙を拭うエマがいた。
そしてその夜、酒屋の旦那が主催する受賞記念式典が盛大に開かれた・・・

{エマの慟哭}・・・完