可視圏に入ってきた北爆

可視圏に入ってきた北爆

バンダービルド


訪韓した米高官(ティラーソン国務長官)が、「対北の戦略的忍耐」の公式終結を宣言した。 
「忍耐の終結」とはつまり、「その気になれば」(「条件が揃えば」)いつでも武力を動員して北朝鮮の核問題を終えるという意味になる。
今回の公式宣言で、トランプ政権は、自ら退路を遮断する姿となった。

米国がこのように強硬な態度に出てきたのは、米国としても、域内(北東アジア)を超えて米本土まで脅かす北朝鮮の核・ミサイル能力をこれ以上看過できないという立場に直面しているという意味になる。
米国が韓半島にサード配置を急ぐのは、予想よりも早く北朝鮮の核・ミサイル開発が進歩(速度)しているのと無関係ではない。

慶北星州に配置されるサードは、韓半島駐留の米軍兵力と施設の防護が第一の目的である。
サードで首都圏の防衛は不可能である。
それで政府は現在、全国に散在している旧型パトリオットミサイル40砲台のうち、3分の1を年内のうちに新型(PAC3)に交換するとともに、首都圏に新型パトリオット砲台を追加配置して、4つのパトリオット砲台で首都圏の防御能力を高めるにした。

また24日まで(13日から)に実施される韓米合同軍事訓練(Key Resolve)では、北朝鮮のミサイル攻撃に備えたサードとパトリオット迎撃訓練が比重あるように組織された。
ビンラディン射殺部隊(ネイビーシールズ)を伴った米空母の入港と戦略爆撃機の飛行もあった。

北朝鮮の核・ミサイルの共同被害者格の日本側の動きも格別だ。
事実上の空母である「いずも」が、5月初めから3ヶ月間、南シナ海とインド洋に派遣される。
日本政府は、「敵基地攻撃能力保有の意向」を少し前に公式に言及した。
日本のこのような態度は、以前とは180度変わったものだ。
米国側と事前の意見交換を経たものと把握される。
同時に、北朝鮮地域の監視を主目的とする高性能偵察衛星が17日に追加で発射された。

総合すると、最近特に早い米国側の動き(サード配置、忍耐終結宣言など)と日本側の動き(敵基地攻撃、偵察衛星の強化など)は、「某種のプラン」を準備する準備作業だと理解するのに十分である。
日本の一部の地域では、北朝鮮のミサイル攻撃に備えた住民の避難訓練まで実施された。

ティラーソン米国務長官の「対北忍耐終結」宣言により、今後の関心の焦点は、このような忍耐終結の基準となる米国の「レッドライン」が果たしてどのレベルなのかという点である。
例えば追加の核実験の際に北爆するのか、それとも核実験の兆候が濃厚だと判断すると、すぐに北爆するのか、それとも北朝鮮が実際に軍事的攻撃をしようとする場合に限って北爆をするのか、などの問題が残る。
ところが現実的には、北朝鮮の与える脅威が、米国が内心で心の中で定めた「レッドライン」に到達するかどうかに関係なく、、最適の準備さえ整えば、米国はいつでも必要なときに北爆をする可能性を排除できない。

つまり、米国は、最適の時期と判断した場合、決められた「レッドライン」(例えば核実験)に到達するまで待たず、いくらでも北爆に出る可能性も十分にあるということだ。
それは比較的マイナーな北朝鮮の動き(例えばレッドラインに達していない「東海へのミサイル発射」)でも、米国は、電撃的に北爆をして、国際社会などに向けて、「今回の東海へのミサイル発射はレッドラインを超える深刻な技術的実験」というふうに発表すれば終わりである。
このようにすると、数十年間韓国を苦しめてきた、北朝鮮の核問題は幕を下ろすことになる。

問題は、有事の際(北爆)に、北朝鮮が短い時間でも、報復の次元で韓国の首都圏に向けて攻撃(ミサイル、砲撃など)に出る場合と、中国の介入の試みだ。
朝鮮半島での最近のにぎやかな動き(サード、パトリオットの迅速展開)と、日本の動向(空母いずもの中国の近所への派遣)は、実質的にこれらの2つの問題(北爆時の韓国首都圏のリスク、中国の介入)の回避策と見ることができる。

米国は、この一つである中国の介入の可能性の問題を根本的に解決するために、4月に米中首脳会談で時談判をする可能性が高い。
つまり、トランプは習近平に向かって、「北朝鮮に核とミサイルを完全放棄させるか、あるいは北爆に干渉しないか」という二者択一の通告する可能性が高い。
中国の立場では、米国の要求どおりに素直に北朝鮮に核・ミサイル開発を完全に放棄させるか、もしそれが嫌なら、北爆時、米国に対抗(朝鮮半島進入など)する冒険をするしかない立場だ。

米国は、中国が後者(米国に正面対抗)の方を選ぶ場合に備えて、日本との役割分担の次元で、辞書的に日本の軍事力を中国近海に展開(いずも)を開始するようにした状況が濃厚である。
これにより、トランプは事実上、中国に向かって、「アジア駐留米軍と日本の軍事力を動員し、北朝鮮だけでなく、あなた(中国)まで相手にする用意はいくらでもある」という強硬なメッセージを投げることに他ならないと見てもよい。

結論として米国は、韓国内のサード配置と、中国との談判という二つの手順さえ終われば、いつでも好きなときに北爆に乗り出すことができるようになる。
以後、北爆の名分はどうにでもつけてくる可能性が濃厚である。
さらに、特異な動向が捕捉されていない状態で、電撃的に北爆をして、「レッドラインを超える深刻な試みが事前に検出された」と公表する場合などまで予想することができる。

現在、北朝鮮が既存の態度(核・ミサイルへのこだわり)を変えず、中国が米国を納得させるだけのレベルで、北朝鮮に対して影響力を行使しない限り、北爆は避けられない側面が大きい。
一言でいうと、現状(北朝鮮の脅威)が解決しない場合、米国(トランプ政権)の公式宣言(「対北忍耐終結!」)を、米国が改めて体面を共感にせずに覆さない限り、北爆は時間の問題だろう。

中国が米国との談判過程で「北爆黙認」の態度をしようが、「北爆の座視は不可」の態度に出ようが、結果は変わらない。
前者の場合(中国の北爆黙認)、比較的無難に終わる北爆になるだろうが、後者の場合(中国の北爆反対)は、北爆と共に、アメリカと日本の連合と、中国との間で、政治的葛藤はもちろん、場合によっては軍事的葛藤(中国の近くで制限局地戦など)の状況まで排除することができないが、現実的に中国は、自分が反対する北爆が実行されても、激しい政治攻勢以外で、軍事的に正面対抗して、米国と日本の軍に対抗するのは現実的に難しいと見ることができる。

北爆の瞬間がやって来ると、北朝鮮の立場では、その瞬間、大きな意思決定を下さなければならない。
例えば、このような式である。 
「ソウルに報復攻撃するか?それだと全面戦争になって、中国が助けてくれない限り、私たち(北朝鮮)は崩壊する」。
一言でいうと、北爆が実際に実行されても、北朝鮮のソウルへの報復攻撃は、思ったほど簡単ではないという点である。

最悪の場合、北韓の報復攻撃があっても、この場合、韓国の立場では、多少の被害を受けるのと引き換えに、完全な韓半島統一のチャンスを狙うことができる状況が展開される可能性があるので、むしろ大きな視野で見ると、損害がない。

次期韓国大統領が、事実上左派(反米反日)性向の人物になる可能性が高いという現実は、逆説的に、米国の負担(左派大統領が北爆に強力に反対)を軽減する要因になる。
もし米国と言葉がよく通じる右派の人物が大統領に当選し、米国の北爆計画に強く反対した場合、米国の行動半径は大きく制約されるしかない状況になる。
むしろ言葉の通じない韓国の左派大統領なので、初めて(事前協議なく)北爆が可能になるという逆説が成立するのである。

これらの面で、愛国市民の立場では、今日の韓国の政治状況は厳しい(左派勢力拡大)が、これはむしろ北爆を通じて韓国を根本的に北朝鮮の核・ミサイルの脅威から救い出すための大きな流れ(プロビデンス)の一つだと理解するなら、むしろ希望的な状況になる。

絶望が変化して希望になる場合が世の中にはいくらでも存在する。
現在の韓半島の状況を希望に置き換えるための事前作業(サード配置、米中交渉など)は進行中である。
近いうちに(数年以内)絶望が変化して希望があふれる韓半島になることを期待している。

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