加齢とともに口も臭くなる…はホント?歯科医師に聞いてみた


加齢とともに口も臭くなる…はホント?歯科医師に聞いてみた
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「おじいちゃんオクチくちゃ~い」って、自分で鼻つまんでどうすんねん…

 日本老年学会・日本老年医学会の高齢者に関する定義検討ワーキンググループでは、現在65歳以上を高齢者としているが、この定義が現状に合わないとし、65~74歳を准高齢者、75~89歳を高齢者、90歳~を超高齢者としてはどうかと提言している(2017.1.5)。このような提言が出てきた背景には現在高齢者といわれている人達が若々しく活動的であるがゆえだろう。

だがその一方で、「教えて!goo」には「悩んでいます!」と、加齢による体臭と口臭に悩む50代女性から相談が寄せられていた。前述の提言からしたら50代はまだまだ若いと思われそうだが、身体的な部分で加齢の影響は否めない様子。だが加齢臭という言葉はよく聞くが、口臭も加齢が原因になるのだろうか? そこで今回はたなか歯科クリニックの院長、田中陽平さんに加齢と口臭の関係について聞いてみることにした。

加齢と共に口臭悪化の条件も整う
 まず、年をとると口臭もきつくなるのは本当なのか伺った。
 「年齢と口臭の関係をデータにした文献を見直さなければ正確にお答えできませんが、私の現段階の知識と臨床感覚のみでお答えしてよければ、恐らく本当です」(田中医師)

 残念ながら、これは我々の体感通りの答えである。理由は何だろうか。
 「口臭の発生は、口腔内細菌の種類と量により変わります。年齢を重ねるにつれ、食事が多様化すること、人工物で歯を修復する機会も増えることなどによって菌が繁殖するチャンスが増えます。加えて、40代以降は、においの元の一つである『歯周病菌』が盛んに繁殖し、歯周病が発症するケースが多くなります。これらのことから、加齢と口腔内環境の悪化とは比例することが多いと推測されます」(田中医師)

 若い時に比べて口の中の環境が悪化するため、口臭が引き起こされるということのようだ。
免疫力の低下も口臭の原因に

 口の中の環境以外にも、口臭が悪化する原因はあるのだろうか。

 「お年寄りは一般的に、若い方よりも免疫力が弱く、菌を退治する力も弱いことが多いです。口腔内細菌のみならず、内臓関連の菌を退治する力が弱まることや、病気に対する免疫力が低下するという観点からも、高齢者の方が口臭を発する可能性が高いと推測されます。これを防止するには、口腔内を清潔に保つこと、体の免疫を高めること、このふたつに尽きます」(田中医師)

 加齢による身体機能の衰えが口臭にも影響を与える。これはある程度仕方がないことだろう。しかし、自身の体調をしっかり管理することで、口臭の発生を抑えられる可能性もありそうだ。

口臭の感じ方は人それぞれ
 多かれ少なかれ誰にでもある口臭だが、他人に不快感を与えているかどうか判断する方法はあるのだろうか。

 「口臭にはネガティブなイメージがありますが、誰にでも存在しますし、普段とは異なる変化に気づくことができれば、病気のバロメーターと捉えることもできます。また、においは人によって感じ方が違います。好みも人それぞれです。悩んでいる方は『口臭測定器』という、客観的に数値で確認できる機械もありますので、そちらで測定してみることをおすすめします。一般の歯科医院で対応できる所は少ないですが、総合病院の口臭外来であれば対応できるかと思います」(田中医師)

 口臭の度合いを客観的に判断できれば、結果はどうであれ前向きに対応することができそうだ。また、田中医師は次のように続ける。
 「私の臨床感覚としては、気にされている方は総じて口臭が少なく、強い口臭を発する方は意外と気にかけていない場合が多いです。においというのは、人の感受性が大きく関わっている分野であることも付け加えておきます」(田中医師)

 口臭を気にしすぎるのもよくないが、全く気にしないというのも問題だろう。最低限のエチケットは守りたいものだ。
 加齢による口臭への影響は、大なり小なり誰にでも起こりうるものである。原因も人によって違う。もし深刻に悩んでいるなら、専門の医師に相談し的確に対処するとよいだろう。

●専門家プロフィール:田中陽平 たなか歯科クリニック院長。質の高い医療と長期管理という医療理念の元、おもてなしの心を大切にし、「歯ではなく人を診る」というスタンスで一人ひとりにあった治療を提供している。