「睡眠不足だと認知症になりやすい」はウソ・ホント?

「睡眠不足だと認知症になりやすい」はウソ・ホント?

 この記事では、今知っておきたい健康や医療のネタをQ&A形式で紹介します。ぜひ、今日からのセルフケアにお役立てください。
【問題】睡眠不足は脳の働きに大きな影響を与えることが知られていますが、近年、睡眠時間が短い人は、アルツハイマー病の発症率も高いことが分かってきました。これってホント? ウソ?

(1)ホント
(2)ウソ

 正解は、(1)ホント です。
 徹夜明け、ボーッとしてうまく頭が回らない――。そんな経験はありませんか。睡眠不足は脳の働きに大きな影響を与えます。

 「睡眠不足の日が何日か続くと、明らかに記憶力や認知能力が衰えることが分かっています」と話すのは、RESM新横浜 睡眠・呼吸メディカルケアクリニック(横浜市港北区)の白濱龍太郎院長です。

■しっかり眠っている人は記憶力が高く、成績も良い
 「記憶を司るのは脳の海馬という部分ですが、睡眠時間が少ない子供はこの海馬の体積が小さくなっています。成人を対象にした研究でも、しっかり睡眠時間を取っている人の方が記憶力が高いというデータが出ています」と白濱院長。

 例えば、米国で120人の高校生を対象に「睡眠時間と成績の関係」を調べた研究では、成績の良い生徒ほど睡眠時間が長く(7時間半程度)、就寝時刻が早い(22時半ごろ)という結果が得られました(図)。


 さらに、「慢性的な睡眠不足は将来の認知症にもつながる」と白濱院長は警告します。
 認知症には「脳血管性認知症」や「レビー小体型認知症」などもありますが、圧倒的に多いのはアルツハイマー病。この病気は「β(ベータ)アミロイド」(アミロイドベータ)というたんぱく質が脳にたまって、脳の神経細胞を破壊することで起こります。

 「たまったβアミロイドは睡眠中に処理されます。年をとるとメラトニンというホルモンの分泌が減り、眠りが浅くなるため、βアミロイドがたまりやすくなる。日中に増えたβアミロイドを消すためには6時間半以上の睡眠が必要です」と白濱院長は話します。睡眠不足が続くと、脳内のβアミロイドを処理しきれず、返せない借金のように、どんどんβアミロイドが増えていき、アルツハイマー病を発症する危険性が高まるというわけです。

 「実際、睡眠時間が短い人はアルツハイマー病の発症率が高いことが分かっている」と白濱院長。2015年には、脳内にβアミロイドが増えると睡眠の質が悪くなり、さらにβアミロイドがたまりやすくなる悪循環を引き起こすことを示唆する研究結果も発表されています(Nat Neurosci. 2015 Jul;18(7):1051-7)。

(日経Gooday編集部)