スマホ“オワコン”次は「人間スマホ化」、あの起業家が投資「記憶もネット保存“MR技術”」

サムスン自爆は“前座”…スマホ“オワコン”次は「人間スマホ化」、あの起業家が投資「記憶もネット保存“MR技術”」

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米国の著名な起業家、イーロン・マスク氏が、ヒトの脳とコンピューターを接続する技術を研究する新会社「ニューラリンク」を設立する考えを明らかにしたニュースを伝える米CNNニュース(電子版3月28日付)

 さて、今週ご紹介する“エンターテインメント”は、先週に引き続き、IT(情報技術)とスマートフォン(高機能携帯電話)に関する話題でございます。

 先週の本コラムで、韓国・サムスン電子のギャラクシーのシリーズや米アップルのiPhone(アイフォーン)といったスマホのお話をしましたが、日本ではやはり今も、今秋に発売されるとみられるアイフォーンの最新モデル「8」について、IT系のニュースサイトやファンの間では、非接触による充電機能や3D(3次元)技術を用いた顔認証システム、またディスプレーに有機ELを使うのでは…といった噂が飛び交っています。

 だがしかし。欧米では、先読みができる、めざとい人々の間で何と“スマホなんて、せいぜい持ってあと10年。いずれ存在そのものがこの世から消え去ることになる”と言われ始めているのです。

 平たく言えば、機種変更がどうのこうのということではなく、スマホもポケベルやレコード針、カセットテープ、フロッピーディスクのような運命をたどることが、早くも確定したというのです。

 “ほんまかいな”“ネタやろ”と思ったあなた。ほんまなんです&ネタちゃいまんねん。というわけで今週の本コラムでは、既に“オワコン確定”の烙印(らくいん)を押され始めたスマホの運命と、その代わりに登場する新技術についてご説明いたします。

リニア新幹線より早く実現!? あのイーロン・マスク氏が止めを刺す…リアル「攻殻機動隊
 読んでいて、昨今の技術革新の早さに驚くとともに、思わず納得してしまいました。米経済・IT系ニュースサイト、ビジネス・インサイダーが4月2日付で報じた記事です。「スマートフォンは結局、死を迎え、物事は真にクレイジーな状況になるだろう」という見出しの通り、スマホがなぜ消えてしまうのかについて、けっこう詳しく&論理的に説明しています。

 どういうことかと言いますと、このビジネス・インサイダーの記事はまず冒頭<ある日、それほど早い時期ではないが、あなたが考えているより早く、スマートフォンはポケベルやファクシミリのように(この世から)消え去るだろう>という衝撃的な書き出しでスタート。

 そして<とはいっても、スマホが何らかの意味あるデバイスに取って代わられるには、恐らく、少なくともあと10年はかかるだろう…それでもスマホ(の存在)は最終的に(名うての起業家の)イーロン・マスク氏(45)やマイクロソフトフェイスブック、アマゾン、そして数え切れない程の革新的なベンチャー企業が破壊するだろう>と明言。

 そのうえで<ここでは、スマホが死に向かってゆっくり、そして絶え間なく続ける行進と、スマホ後の世界がどのようになるかについて見てみたい>と述べ、具体例を説明します。

 それにしても“少なくとも、あと10年は大丈夫”ということは、裏を返せば“早ければ10年後からスマホはいよいよ消え始める”ということで、これ、やはり衝撃的な予言ですよね。

 というわけで、具体例として、まず、3月末に発表されたサムスンの新型スマホ「ギャラクシー S8」と「S8プラス」(米での発売は4月21日の予定)が、現行モデルの「S7エッジ」と同じく画面両側の縁がない大画面を売りにしたり、AI(人工知能)を駆使した独自の音声ガイド機能「ビックスビー」を搭載しているといった概要を紹介。

 「ビックスビー」の搭載によって、例えば、この「S8」や「S8プラス」の内蔵カメラをワインのラベルにかざし、いろいろ操作すると、ディスプレーの部分にそのワインに関するオンライン上での評価が表示されたり、購入できる場所なども教えてくれるそうです。凄いですね。

■カギ握る“MR技術”とは
 また、自社のスマホと一体化させて使うヘッドマウントディスプレイ(両眼に覆い被せるように装着し、大画面や立体画像などを演出するディスプレー)で「ヴァーチャル・リアリティー(VR=仮想現実、コンピューターが作り出す仮想空間でリアルな体験ができる技術)」が楽しめる「ギアVR」(日本発売は未定)の新バージョンも発売するといいます。

 そしてライバルのアップルも、次のアイフォーン8で、AI(人工知能)を駆使した音声ガイド機能「Siri(シリ)」をアップグレードし、あのポケモンGOでおなじみの「拡張現実(AR)」(現実空間に付加情報を表示し、現実世界を拡張する技術)を楽しめる何らかのサービスを提供するとみられています。

 それだけではありません。マイクロソフトフェイスブック、アップル、そして2010年に米で設立され、グーグルなどが2014年に巨額投資した謎のベンチャー企業、マジック・リープ社が熱心に研究する「複合現実(MR)」の技術についても言及します。

 「複合現実(MR)」とは「仮想現実(VR)」や「拡張現実(AR)」をさらに進化させたもので、現実の風景にコンピューターの画面や映像などを重ねて表示する技術です。ヘッドマウントディスプレイ(スマホと一体化させる必要なし!)のような機器を頭からかぶれば、こうしたSFチックな映像がリアルに楽しめるのです。

 2014年10月21日付の米紙ニューヨーク・タイムズ(電子版)によると、このマジック・リープ社にグーグルを中心とした投資家グループが計5億4200万ドル(約603億円)を投資し、大いに話題となったのですが、未だにどんな機器を使うのか明らかになっておらず、謎に包まれた企業です。

 とはいえ“こんな風景が体験できますよ”というデモ動画を昨年4月、YouTube(ユーチューブ)にアップしています。これを見れば一目瞭然です。
 ここまで読めば多くのみなさんもお気づきになったはずです。テレビの画面もスマホの画面も、こうした技術の前では無に等しいのです。

 実際、マイクロソフトが2015年に開発した「拡張現実(AR)」が楽しめるヘッドマウントディスプレイ「ホロレンズ」(昨春から米では開発者に限定販売されています)の開発責任者、アレックス・キップマン氏は3月7日付のビジネス・インサイダーにこう話しています。

 「ホロレンズのような機器が秘める可能性は、いつかあなたのスマホやテレビ、そしてあらゆる種類の画面をそれらに置き換えることができるということです」

 確かにそうですね。専用のヘッドマウントディスプレイを頭から被れば、現実世界の風景、例えば現実の自分の部屋やオフィスの眼前や空中にディスプレーがポンと登場し、それを操作すればさまざまな情報や動画が楽しめます。操作はもちろん音声で、アイフォーンの「シリ」のようなAI(人工知能)を駆使した音声ガイド機能が大活躍というわけです。
 
そうなれば、スマホは確かに必要なくなります。こうしたヘッドマウントディスプレイに携帯電話の機能を加えれば良いだけの話ですからね…。

■電気自動車テスラCEO、脳とコンピューター直接つなぐ技術の本格研究に着手
 というわけで、スマホは早ければ10年後から消え始めるというわけなのですが、前半にご紹介した“真にクレイジーな状況”とは一体、何のことなのか?。平たく言えば、ヘッドマウントディスプレイを被らなくても「仮想現実(VR)」や「拡張現実(AR)」、「複合現実(MR)」が楽しめる時代が来るというのです。

 ヘッドマウントディスプレイを被らなくても、目の前に様々なディスプレイや操作画面がポンポン飛び出し、空中にキーボードが浮かび、それらを操作すればOKらしいのです。

 “前から気付いていたが、お前はやっぱり頭おかしいやろ”と思ったあなた。間違ってますよ。3月27日付の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や、それを受けた翌28日付の米CNNニュース(いずれも電子版)などが驚きを持って伝えたのですが、あの名うての米起業家イーロン・マスク氏(45)が、ヒトの脳とコンピューターを接続する技術を研究する新会社「ニューラリンク」を設立する考えを明らかにしたのです。

 米国の著名な起業家、イーロン・マスク氏が、ヒトの脳とコンピューターを接続する技術を研究する新会社「ニューラリンク」を設立する考えを明らかにしたニュースを伝える米CNNニュース(電子版3月28日付)

 マスク氏といえば、米宇宙開発企業のスペースXや電気自動車(EV)メーカーのテスラの最高経営責任者(CEO)で知られ、常人の20年くらい先の発想でビジネスを展開する人物で知られますが、その彼が、この新会社でヒトの脳とコンピューターを直接つなぐ「ニューラルレース」と呼ばれる技術の本格研究に着手するというのです。

 ヒトの脳に小型の電極を埋め込み、脳とコンピューターとの間で思考(データ)のやりとりを可能にするというこの技術を用いれば、何が起こせるか。もはや説明の必要はないですね。将来は、人間の記憶が、スマホで撮影した観光地での写真や動画のように、コンピューターのサーバーに記憶されたり、自分の意志だけで空中にパソコンのキーボードが浮かび、ヒトはそれを叩いたりするんですかね…。

 この技術についてマスク氏は、まずパーキンソン病といった神経疾患対策といった医療分野で活用したい考えを示していますが、3月28日、自身のツイッターで「この研究に時間を割くのは難しいが、やらないことの実存的リスクは高過ぎる」と述べるなど、意欲を見せました。


 また、マスク氏は3月26日発売の米誌ヴァニティ・フェアで、こうした研究の成果が「あと4、5年で何らかの形になると思う」とも語っています。

 ちなみに前述のWSJによると、この研究、フェイスブックも極秘裏に薦めているほか、米国防総省も既に4年間で6000万ドル(約66億円)を投入しています。スマホが消え、代わりに人間がスマホそのものになってしまうのです。そんな時代が来るまでにはさっさと死んでいたいですなあ…。 (岡田敏一)
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【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家。京都市在住。