動脈硬化 20代で目に見える症状 「中高年の病気」ではない

動脈硬化 20代で目に見える症状 「中高年の病気」ではない

http://www.sankei.com/images/news/170509/lif1705090025-n1.jpg
東丸貴信医師(平成横浜病院健診センター長・東邦大学名誉教授)

 心筋梗塞脳梗塞の引き金となる動脈硬化といえば、中高年が注意すべき病気と思われがちだが、早い人では10代で最初の兆候が表れ、20代ではっきりと目に見える症状が出てくるという。専門家は、中・高生も食生活に注意し、メタボリックシンドローム内臓脂肪症候群)や肥満にならないようにするとともに、リスクの高い人は30代でも人間ドックを受けることを勧めている。(山本雅人)

 ◆10代の食生活重要
 「10代の食生活は世界中で問題になっているが、日本人は特に注意すべきだ」と語るのは、4月に平成横浜病院の健診センター長に就任した東丸(とまる)貴信医師(東邦大名誉教授)。東丸医師は東邦大医療センター佐倉病院教授時代の平成19~22年、同病院で頸(けい)動脈エコー検査を受けた20~44歳の244人を調べた。頸動脈エコーは全身の動脈硬化の状態を知る一つの指標になるといわれている。

 その結果、27歳で血管内にプラーク(血管が詰まる原因となるこぶ状のふくらみ)がある人が2人見つかるなど、早い人では20代で動脈硬化の目に見える症状が表れていることが分かった。プラークがあると、脳梗塞などを引き起こす血栓ができやすくなる。

 さらに、動脈硬化を起こした最大の要因は何かを探るため、各人の血圧、血糖、脂質などのデータと照合。その結果、若年層の動脈硬化促進には、拡張期血圧の高さが最も影響を及ぼしていることが判明した。

 ◆拡張期血圧に注意
 東丸医師によると、拡張期血圧(下の血圧)は、心臓が収縮して血液を送り出し、全身を巡った後の血液が心臓に戻った状態での血圧。収縮期血圧(上の血圧)に比べ最も数値は低くなる。「それにもかかわらず拡張期の血圧が高いということは、収縮期も含め血管内が常に高いストレスにさらされている状態ということで、動脈硬化を促進する」という。

 この研究は26年に日本動脈硬化学会英文誌(JAT)に発表され、20代での動脈硬化を科学的に裏付けたとして反響を呼んだ。

 拡張期を含め血圧を上げる要因は、塩分摂取過多だけではなく、食の欧米化などによる肥満やメタボも大きく影響している。東丸医師は「食べる量が増える中学生から高校生の時期は、食生活が血管に与える影響もより大きくなる」とし、「揚げ物を減らし、豆類や野菜を多く摂取することを心がけてほしい」と語る。

 また、動脈硬化は自覚症状がないため進行に気づきにくく、早めに知るには検査しか方法がない。だが、一般的な健診では検査項目に入っておらず、さらに、病気のイメージから50代くらいにならないと検査を受けない人も多い。

 東丸医師は「動脈硬化の原因となる高血圧、高血糖、脂質異常が指摘された人は、数値がそれほど高くなくても、30代で頸動脈エコーや血管年齢検査をオプションで付ける形で人間ドックを受けるとよい」とアドバイスしている。
                   
 ■リスクの現れ、日本人がやや早め
 動脈硬化の最初の兆候は、血管壁に脂肪が沈着する「脂肪線条」と呼ばれるもの。だが、東丸貴信医師によると「簡便な検査で、脂肪線条の段階でつかむのは難しい」という。日米の解剖データから、早い人では10代から脂肪線条が現れるという。

日本人の方がやや早い傾向があり、その理由を「肉の摂取が少なかった長い歴史を通じてできた体質が、現代の欧米化した食生活に対応できていない結果」だと説明する。対策として、「伝統的な和食中心にすれば、脂肪線条の出現を10年くらい遅らせることができるのではないか」と話している。