ダージリンで出会った韓国若者から見えてきた奇怪な思考方法
ダージリンで出会った韓国若者から見えてきた奇怪な思考方法
それぞれの思いを抱えた3人の韓国の若者
4月15日から22日まで私はインド東ベンガル州の紅茶で有名なダージリンに滞在。安宿の4人部屋で3人の韓国人の若者と同宿となった。彼らのプロフィールは私がこれまでバックパッカー旅行で出会った韓国若者の平均像と一致していた。すなわち韓国の普通の快活で明朗な若者達であった。
彼らと話しているうちに韓国人の思考回路がとても経済先進国とは思えない不思議なものであることが分かってきた。先ずは3人のプロフィールから紹介しよう。
韓国人バックパッカーの定番コースを歩むキューちゃん:北朝鮮との国境に近い地方の町の出身で大学には進学せずにアルバイトをしては世界各地を旅行している21歳の男子。彼は時間があれば英語の小説を辞書片手に読んで英語を学習していた。
日本には四回訪れており大の日本ファン。日本食が大好物。将来何をしたいのかはこれから探してゆくという。今回の旅が終わったら秋から兵役に就く予定だ。
富裕層出身、迷える脚本家志望のチェリ君:ソウルにある芸術大学で油絵を専攻している大学2年生。ソウルの裕福な家庭で育ったらしく真面目な受け答えをする。チェリ君の母親は中国大陸出身で父親と結婚後韓国籍に帰化したという経歴。彼女は財閥系商社で中国関係の仕事をしているキャリアウーマン。
チェリ君は油絵を専攻したが入学したら定型的な課題制作が嫌になった。今年6月に2年の課程を終了したら7月から兵役に就いて復学後は脚本・シナリオ制作を学ぶ学科に転向したいという。
ちょっとイイ感じのアラサー女子プリア:3人目は釜山近郊出身、30歳の看護師のプリアさん。身長が165センチくらいでロングヘヤーにスレンダーボディー。ちょっとイイ感じの女子である。彼女は仕事を始めてから毎年1カ月くらいの休暇を取っては海外旅行をしてきたが、今回は大手病院を辞めて一年間の予定で世界一周旅行中。
北朝鮮危機には無関心な韓国人の心情
4月17日に安倍首相が北朝鮮有事に備えて関係閣僚に対応策を指示したことに韓国政府が「北朝鮮を徒に刺激して朝鮮半島情勢を悪化させる無思慮な態度」と非難したことがニュースとなった。日本のメディアでは北朝鮮問題に鈍感な韓国国民に疑問を呈するコメントがなされていた。
数日後夕食のあとで韓国若者男女3人と雑談中に「アベはなぜ軽率な発言ばかりするのか理解できません」とチェリ君が小生に疑問を投げてきた。チェリ君はキャンドル革命での集会に5回参加したという政治意識が高い青年だ。他の2人も全く同感と小生の反応に興味津々。
「北朝鮮が戦争を挑発する危険な行動に出ていることに韓国民は危機感を抱いていないの」と逆に尋ねると「北朝鮮危機はクレージーなトランプとアメリカ軍部が煽っているのが原因。韓国次期大統領候補は太陽政策を掲げて北朝鮮との話し合いを表明しているのでアメリカが静観していれば平和的に事態は収拾します。日本はいつも米国に追従して事態を混乱させる行動を採るので韓国国民は不愉快に感じています」と逆に米国と日本を批判。
話し合いで解決できると妄信しているようだ。中国が尖閣を攻撃してきたら話し合えばいいと主張していた横浜の青年弁護士を思い出した(続地中海編第3回ご参照)。あまりに素朴な楽観論と当事者意識の欠如に言葉を失った。
北朝鮮戦争は米ソが作り出したもので韓国民には何の関係もない
「韓国人は被害者なので積極的に北朝鮮危機に関与する必要も義務も一切ないわ」とプリアは顔を紅潮させた。キューちゃんは「そもそも日本が朝鮮半島を不法軍事占領して収奪して国力を疲弊したことが原因で独立後も十分な国家体制を確立できなかったことが朝鮮戦争の本当の原因ですよ。」と止まらない。
国内政局のほうが北朝鮮問題よりも深刻で喫緊の課題
チェリ君は「セウォル号事件発生時における朴槿恵の空白の時間の問題の解明のほうが韓国民には重大ですよ。そしてサムソンなどの財閥との癒着を徹底的に追及してパククネを一生刑務所で反省させることこそ韓国民が望む正義(justice)ですよ。それに比較すればトランプが仕掛けている朝鮮危機は韓国民には意味がないことですよ」と国民感情を説明。
これに他の2人も全く同感だと同調。国際情勢を直視せず事大主義に甘んじて国内政局に明け暮れていた19世紀末の李氏朝鮮王朝の末期と国民意識が変わっていないと愕然とした。彼らが若者らしく誠実に真剣に政治問題に関心を持っているのは痛いほど理解できるが、広く国際情勢を見ずに目前の国内政局に固執してしまう背景が理解できなかった。
キャンドル革命は韓国民主主義の偉大なる勝利
3人が口を揃えたのがキャンドル革命への称賛である。チェリ君は朴槿恵大統領の弾劾(impeachment)が決定したときに感激のあまり泣いたと感情を高揚させる。チェリ君とキューちゃんによると「歴史上最高の指導者は金大中と廬武鉉です。彼らは北朝鮮との関係を改善して国民に民主主義を与えた。朴正熙・全斗煥は国民を弾圧した独裁政治家であり韓国民にとっては暗黒の歴史時代。そして李明博・朴槿恵の二人は全くの無能力者で国家を大混乱に陥れた。」と滔滔と語る。そして2人の見解は10代、20代の若者の意見を代表していると胸を張った。
韓国の高齢者層の政治意識レベルが低いのは日本の軍事占領の結果
朴正熙の強い指導力で韓国は高度経済成長を遂げたと史実を指摘すると「韓国民が優秀だから独裁者の下でも経済発展することができたんですよ。朴正熙がいなければもっと韓国は発展したはずです」と猛反発。さらに「独裁者を許してしまったのは当時の国民の大半が日本支配時代に教育機会を奪われ文盲状態だったからです」と補足。諸悪の根源は日本という論法は韓国人の定番である。ソウル帝大を頂点に寒村部まで初等教育を普及させたのは日本であるが愛国反日歴史教育のおかげで史実を学んでいないので反論しても意味がない。過去を全否定する思考では「歴史から学ぶ」ことはできないのではないかと危惧した。
次期大統領最有力候補は信頼できる経験豊富な政治家
「李明博も朴槿恵も韓国民が自由公正な選挙で選んだのになぜ彼らを全否定できるのか。韓国民にも責任があるのではないか」と質すと「韓国では中高年層の投票率が高くて若年層の投票率が極端に低いことが原因で2人を選んでしまった。中高年は長年の保守政治に慣れてしまっていた。キャンドル革命は多数の中高生も含む若年層主体の政治運動であったので次回選挙では正当な結果が期待できますよ」と意気込む。
3人とも現在支持率トップの文在寅氏を支持するという。理由を聞くと単純で「すべて朴槿恵と反対の政策を掲げているからです。彼は弁護士で廬武鉉政権でも活躍した政治家なので信頼できます。朴槿恵を支持していたような保守系候補だけは絶対にダメです」とのこと。具体的政策論ではなく感情論・善悪論で判断するのが韓国民主主義らしい。
韓国は歴史的に中国の一部であったことはない
習近平とトランプ会談における「朝鮮半島は歴史的に中国の一部であったことがある」という発言については、韓国政府よりも強硬に反発。高麗が元の支配下にあったことや、歴代李氏朝鮮王朝が中国の保護国として朝貢外交により政権を維持してきた史実は知らないようであった。
3人ともに素晴らしい若者であるがどうして客観的史実や国際政治の現実から乖離した思考をするのか大変残念に思った。やはり長年積み上げてきた韓国の愛国反日教育が彼らの思考を歪めているのであろうか。一度韓国の歴史教科書を読んでみたいと思った。