謎の「高速電波バースト」 30億光年先で再び発生
謎の「高速電波バースト」 30億光年先で再び発生
![](https://article-image-ix.nikkei.com/https%3A%2F%2Fimgix-proxy.n8s.jp%2Fcontent%2Fpic%2F20170918%2F96958A9F889DE0E2EBE3E1E0E0E2E2EAE2EBE0E2E3E5E2E2E2E2E2E2-DSXZZO2091324008092017000000-PN1-2.jpg?auto=format%2Ccompress&ch=Width%2CDPR&ixlib=php-1.1.0&w=640&s=65d78e508382b86a592ca7446d90f0e9)
その物体が何なのかは明確にはわかっていないが、科学者らはこの現象を「高速電波バースト(Fast Radio Burst)」と呼んでいる。持続時間はほんの一瞬だが、非常に強力な電波の放出だ。先日、天文学者らが、30億光年かなたにある銀河から繰り返し発生する高速電波バーストを観測した。
地球外生命体探査プロジェクト「ブレークスルー・リッスン」に参加している科学者らが今回の発見に至ったのは、幸いなことに、彼らには見るべき場所がよくわかっていたためだ。研究チームは、米ウェストバージニア州にあるグリーンバンク望遠鏡を、過去に「FRB 121102」と呼ばれる高速電波バーストが観測された空に向けていた。
これまでに観測されたおよそ24の発生源のうち、繰り返し高速電波バーストを起こすことがわかっているのはFRB 121102だけだ。このため、FRB 121102だけが唯一、どこの銀河で発生しているかが判明している。2016年末、数基の望遠鏡を使用して、その発生源の特定が行われたからだ。
「高速電波バーストを研究するチャンスが失われたのではないかと思いました」と語るのは、米カリフォルニア大学バークレー校のケーシー・ロー氏だ。「今回の観測結果は、FRB 121102が再び活動期に入り、こうした強力な電波バーストを、何がどのように発生させているのかを観察しやすくなったことを示すものです」(参考記事:「重力波検出に成功、30億年前のブラックホール衝突」)
ブレークスルー・リッスンのチームは、知的生命体の発する無線電波探査に使う装置をテストするためにFRB 121102の観測を続けていた。このほか、帯域の狭いパルス信号が、銀河間にある星間プラズマなどの障害の中を通り抜ける間にどのように変化するのかを解明することも、彼らの目的のひとつだ。
FRB 121102はしばらくの間、すっかり活力を失ったかのように見えていた。しかし2017年8月26日、ブレークスルーチームは、1時間に15回のバーストを観測した――これはFRB 121102から発せられたバーストとしては、2016年の同時期以来、最も多い回数だ。今回のバーストはまた、これまでで最も高い周波数帯で確認されており、これは電波バーストの放出が非常に変動しやすいものである可能性を示している。
なぜFRB 121102が再び活発になったのか、また今回のバーストが、こうした現象の発生源を突き止める手がかりとなるのかどうかはまだわからない。研究者の間には、今回電波バーストが観測された原因は、発生させる力が何かということとはあまり関係がなく、むしろ周期的にこれを増大させている宇宙空間のさまざまな「レンズ」にあるのではないかという意見もある。
「(FRB 121102の)『高速電波バーストの嵐』は、これまでにも幾度か観測されています。2016年8月から9月にかけては、超大型干渉電波望遠鏡群(VLA)がずっと空振りを続けたあと、突如として爆発したかのように、毎回バーストが観測されるようになったのです」と、米コーネル大学のシャーミ・チャタジー氏は言う。