五輪も「ヘル朝鮮」? 開幕100日切ってメディアが報じた「返納論」4つの理由

五輪も「ヘル朝鮮」? 開幕100日切ってメディアが報じた「返納論」4つの理由

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平昌五輪の開閉会式会場はほぼ完成したが、開催100日を切っても返納論が出ている(ロイター)

 韓国のメディア、マネートゥデイが10月31日、「平昌五輪、今からでも返納できないだろうか?」と題して報じ、波紋を広げている。同メディアは「国民の期待と希望に満たない大会に転落する恐れが大きい」とも論評している。
 4つの返納理由とはなにか。それは、(1)平昌五輪前に外国人観光客、特に中国人観光客が米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の韓国配備をめぐって猛反発したことで激減している実態がある(2)韓国国民の平昌五輪に対する無関心が深刻でチケット販売が不振(3)北朝鮮による核・弾道ミサイル開発に伴って朝鮮半島情勢が緊迫化し、安全に対して各国に不安が生じ、不参加の事態が生じる(4)無分別な投資と競技場の事後活用計画の未確定で膨大な負債が生じる公算が大きい-ことだ。
 実際、韓国の観光産業を支えている中国の観光客は、THAADの韓国配備をめぐって中国が猛反発したことで激減。今年1~9月に韓国を訪れた中国人観光客は319万人で、前年同期の633万人からほぼ半減した。THAADによる今年の経済的損失は8兆5000億ウォン(約8500億円)に達すると試算され、シンクタンクの現代経済研究院は名目国内総生産(GDP)の0.5%に相当すると指摘した。

 さらに、韓国国民の五輪への関心が盛り上がっていない実態がある。韓国のスポーツ行政を統括する文化体育観光省が今年4回にわたって実施した世論調査では、9月の最新結果で66.6%が五輪成功を予測したが、競技場で五輪種目を直接観戦すると答えた国民は7.1%しかなく、調査の回を追うごとに低下している。この影響でチケット販売率も総販売目標枚数(107万枚)の31.8%にとどまっている。来年3月に引き続き開催されるパラリンピックに至っては4.3%(10月30日時点)に過ぎない。
 朴槿恵前大統領の逮捕にまで発展した、親友の崔順実被告の親族が平昌五輪を通じて巨大な利権を得ようとした疑惑が生じたことで、韓国国民の中には平昌五輪と聞くと崔順実被告を思い出し、興ざめしてしまう情勢が根強く続いている。
 平昌五輪が国内的に盛り上がりを欠く中、北朝鮮による核・弾道ミサイル開発によって朝鮮半島が緊迫化し、北朝鮮国境から約80キロしか離れていない平昌五輪の開催地が安全なのかの不安が増大している。オーストリア・オリンピック委員会が「選手団の安全が保障されなければ、韓国には行かないだろう」と明言。フランスやドイツが追随の動きを見せた。

 五輪組織委員会は11月2日、92カ国・地域が参加手続きを完了したと明らかにした。10月末が申請期限だった。ただ、聯合ニュースによると、韓国統一部の副報道官は11月3日、フィギュアスケートのペアで五輪出場権を獲得した北朝鮮国際スケート連盟に参加意思を伝えていないという。北朝鮮の選手団が平昌五輪に参加すれば、安保的不安要因も一挙に解消すると期待されるが、今のところ、希望的観測の域を出ていない。
 インフラ投資を含めた平昌五輪の総予算費は14兆ウォン(約1兆4000億円)まで膨らむとみられている。運営予算は2兆8000億ウォン(約2800億円)だが、歳入は2兆5000億ウォン(約2500億円)で3000億ウォン(約300億円)の赤字が既定事実化されるとマネートゥデイは報じる。さらに首都圏に比べて人口が少なく、アクセスも不便な点を考慮すると、「投資コストの回収は難しい」とし、結局は国民の税金負担に頼らざるを得ないと指摘した。
 中央日報は、韓国が過去の国際スポーツ大会で「血税を食うカバ」になった例が少なくないとし、2014年の仁川アジア大会では16カ所の競技場を新設するなど1兆7224億ウォン(約1722億円)を投資したが、仁川市は15~29年まで毎年100億~1500億ウォン(約10億~約150億円)を返済しなければならない巨額負債を抱えているという。

 韓国産業戦略研究院は、平昌五輪では開催後、主要競技場の管理・運営費に年間313億ウォン(約31億円)がかかると試算。ところが、収入は年間171億ウォン(約17億円)しか見込めず、年間142億ウォン(約14億円)の赤字が予想される。
 これだけのマイナス要因は、これまで韓国メディアで取り上げられ続けられてきた。しかし、開幕まで100日を切った段階でも「返納論」が報じられるところに平昌五輪の成功を疑っている人が多いということを物語っている。
 韓国内では15~29歳の若年層の失業率が12%台になるなどの社会の現状が「ヘル朝鮮(地獄朝鮮)」と揶揄され、国内経済の改善が喫緊の課題として文在寅政権に突き付けられている。自国を地獄と例えて卑下したこの言葉が流行したように、五輪の「返納論」も自虐的になっているためなのだろうか。