「ポンコツ戦闘機」F35、こんなに買っちゃって本当に大丈夫?

ポンコツ戦闘機」F35、こんなに買っちゃって本当に大丈夫?

やっぱり日本はアメリカの金ヅルか

本国アメリカでも問題が続々発覚

トランプ米大統領の就任後、初めてとなるアジア歴訪の旅は「親愛なるシンゾウ」が一強体制を誇る日本から始まった。安倍晋三首相が先に来日した娘のイバンカ大統領補佐官をもてなし、57億円のカネを寄付することでトランプ一家を懐柔して用意万端。
来日したトランプ大統領は「日本の玄関口」である羽田空港ではなく、「日本占領のシンボル」ともいわれる首都・東京に置かれた横田基地に大統領専用機で降り立った。安倍首相とともにご機嫌にゴルフをし、翌日には日米首脳会談に臨んだ。
会談後の共同記者会見で、トランプ氏が力を込めたのは、日本に武器購入を迫った場面。「非常に重要なのは、日本が膨大な武器を追加で買うことだ。我々は世界最強の武器をつくっている」とのセールス・トークから切り出し、「完全なステルス機能を持つF35戦闘機も、多様なミサイルもある」と具体的品目の購入を迫った。
一方の安倍首相は「日本は防衛力を質的に、量的に拡充しなければならない。米国からさらに購入していくことになる」とあうんの呼吸で応じ、トランプ氏が列挙したF35や新型迎撃ミサイルのSM3ブロック2Aなどを購入することを挙げた。
はい、出ましたF35。
F35は、来年3月には青森県航空自衛隊三沢基地に配備されることが決まっているものの、米国で自衛隊に渡された機体はソフトウェアが未完成なため、機関砲も赤外線ミサイルも撃てず、領空侵犯に対処する緊急発進待機の任務につけないことが判明している(参照:現代ビジネス2017年10月5日寄稿「自衛隊の次期戦闘機・F35、実は『重要ソフト』が未完成だった」)。
今のところ、戦闘機というより「ただの飛行機」に近いF35をもっともっと買えというのだ。F35は来年度防衛費の概算要求では1機あたり147億円もする。すでに42機を米国から買うことになっているのだが…。
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実はF35をめぐっては、トランプ大統領の訪日直前にも、米国内で深刻な問題が浮上していた。訓練ができないほどの深刻な部品不足と、整備体制の遅延である。
米国会計検査院(GAO)は10月26日、部品不足により、機体の整備や修理に当初目標の約2倍に当たる約172日を要しているとの事実を指摘。この結果、今年1月から8月7日までの時点で、予定していた飛行訓練は計画の約22%が実行できなかったと影響の大きさを指摘した。
また、昨年のうちに完成予定となっていた関連部品の整備修理施設の建設は大幅に遅れ、完成は2022年までずれ込むとした。その結果、18年からの6年間で維持費が約15億㌦(約1700億円)不足する見込みとなり、整備体制はさらに悪化するとの悲観的な見通しを示している。
このように、開発を進めた本家の米国でも問題が噴出しているのである。
そもそもF35は空軍、海軍、海兵隊三者の異なる要求を基本設計に取り入れた結果、機体構造が複雑になり、重量増という戦闘機としての致命傷を負った。燃料を満載すると、エンジンが1個の単発にもかかわらず機体重量は35㌧にもなり、エンジン2個のF15戦闘機の40㌧に迫る。
その鈍重ぶりは「曲がれず、上昇できず、動けない」と酷評され、2015年には40年も前に開発されたF16戦闘機との模擬空中戦で負けるという失態を演じている。

つまり、F35は「最先端」とは言っても、衛星や他の航空機が集めた情報を統合する攻撃システムの「先端」でしかなく、団体戦なら能力を発揮するものの、個人戦では驚くほど弱いことが証明されているのだ。
こんな戦闘機に日本の防空を担わせようという航空自衛隊もどうかしているが、「もっと買え」というトランプ氏も相当に面の皮が厚いといわなければならない。

「日本製」なのにアメリカから買う?

トランプ氏がF35にこだわるのは成功体験があるからだろう。
大統領に当選した後の昨年12月、トランプ氏は自らのツイッターで「F35は高すぎる」とつぶやいた。
すると製造元のロッキード・マーティン社の株価が急落。今年1月、同社のマリリン・ヒューソン最高経営責任者(CEO)はトランプ氏と会談し、F35を大幅に値下げすることを約束した。最終的に90機分の調達費を約7億2800万㌦(約820億円)も値下げしたのである。
大統領に就任してから約10カ月、上下両院とも与党の共和党が多数を占めるにもかかわらず、重要法案は何一つ成立していない。大統領選で廃止を約束したオバマ・ケア(医療保険制度改革)は残り、税制の見直しもインフラ整備関連法も実現していない。
数少ない成功体験であるF35にすがりたいトランプ氏に対し、贋物をほめる骨董屋の主人よろしく、安倍首相が共感してみせたのが共同記者会見の「武器トーク」だったのではないだろうか。
「武器トーク」に出てきた、弾道ミサイルを迎撃するSM3ブロック2Aの購入表明も素直には受けとめられない。
イージス艦から発射するSM3ブロック1は米国製だが、改良版にあたるSM3ブロック2Aは日米で共同開発し、日米で部品を生産する日米合作のミサイルである。
弾頭部を熱から守るノーズコーン、第2弾・第3弾ロケットモーター、上段分離部、第2弾操舵部といった精密技術が必要なパーツの開発を日本政府に依頼してきたのは米政府である。とくに宇宙空間に飛び出した後、自然な形で割れるノーズコーンは、下町工場の加工技術がなければつくれない現代の工芸品といえる。
ところが、このSM3ブロック2Aも米国から購入するのだ。なぜ国内の防衛産業で製造しないのか。
防衛装備庁の堀江和宏統合装備計画官は「国内産業が組み立て施設を持っていないからです。国内で部品を製造して輸出し、米国のレイセオン社で組み立て、完成したミサイルを輸入するほかない」という。

返品はできません

しかも調達方法は、「現代ビジネス」で何度も指摘している通り、悪名高い有償対外軍事援助(FMS)方式である。
FMSとは、米国の武器輸出管理法に基づき、(1)契約価格、納期は見積もりであり、米政府はこれらに拘束されない、(2)代金は前払い、(3)米政府は自国の国益により一方的に契約解除できる、という不公平な条件を提示し、受け入れる国にのみ武器を提供するというものだ。
買い手に不利な一方的な商売だが、米国製の武器が欲しい防衛省はFMS方式による導入を甘んじて受け入れる。ただでさえ、防衛省のFMSによる調達額は近年極端に増えており、2016年度の米政府への支払い額は過去最高の4881億円に達した。
防衛省資料をもとに現代ビジネス編集部で作成
当然ながら、問題も噴出している。日本の会計検査院は10月26日、防衛省がFMS取り引きを精査できず、米国の言いなりになってカネを支払っているのではないかと指摘した。
防衛省が2012年度から16年度までにFMSで購入した武器類の不具合は734件(91億9118万余円)ある。このうち12件(3194万円)は、防衛省の担当者と武器を受け取った部隊との間の確認作業などに時間がかかり、米政府が期限とした1年以内を越えて是正要求したところ、米政府から門前払いされた。日本側の大損である。
例えば、海上自衛隊の要求にもとづき、防衛省がFMSで購入した151億3000万円にのぼるC130R輸送機(6機)と整備器材一式は、最初から整備器材が損傷していた。米政府に問い合わせている間に時間が経過し、修理を求めたにもかかわらず、米政府から「1年が経過している」として却下された。
防衛装備庁によると、米側に問い合わせても回答すらない場合があり、何度もやり取りするのに時間がかかるという。最初から契約通りの武器類が米政府から送付されていれば、起こり得ない問題ではないだろうか。
どれほど米政府の理不尽ぶりに腹が立とうとも、国内の防衛産業で同種の武器を製造すれば、開発、生産に膨大な時間とコストがかかる。限られた防衛費をやり繰りする防衛省としては唯々諾々として米政府に従うほかない。とはいえ、必要以上に米国から武器を買う必要がないことは言うまでもない。
ところが、安倍首相は共同会見の「武器トーク」の中で「米国からさらに購入していくことになる」と述べた。これが事実上の対米公約となり、米政府からの売り込みが加速するおそれがある。
すでに防衛省はFMSで購入したイージス・システムを組み込んだイージス艦2隻を追加建造しているほか、12月には同システムを地上に置いた「イージス・アショア」もFMSでの購入を決める。米国にとって日本は「カネの成る木」に見えているに違いない。