日本株 主役の「外国人」って誰のこと?

日本株 主役の「外国人」って誰のこと?
通説を疑え

外国人投資家が日本株を5000億円買い越した(売り越した)――。株式市場ではこんなデータが、投資家の強気・弱気に作用する。売買代金の約7割を占める外国人の動きは株価の方向を占う重要な材料だ。しかし、その「外国人」とは一体誰のことを指すのだろうか。
毎週木曜の午後3時。東京証券取引所がホームページで発表する「投資部門別売買状況」は投資家の関心が高いデータの一つだ。
証券会社など取引参加者は執行した注文を東証に報告する際に、どの属性の投資家かを申告する。それを東証が集計して公表するのが投資部門別売買状況になる。
「海外投資家」のほか「個人投資家」や「投資信託」「信託銀行」など投資家のタイプごとに売り買いの金額が公表される。とりわけ売買規模がもっとも大きい外国人は注目度が高い。
東証は海外投資家をおおまかに「日本国外の住所から出された注文」と定義している。「国籍ではなく、拠点のある住所が国外かどうか」(東証)がポイントだ。
この定義に照らすと実は、「外国人はすべてが外国人ではない」という実態が浮かび上がる。
例えば日本人が海外で運用するヘッジファンド。高松一郎最高投資責任者(CIO)が2014年に立ち上げたヴィレッジキャピタル。資金の出し手は地方銀行や信用金庫などほぼ100%が国内マネーだ。だが、法人税率の低さなどからシンガポールに拠点を置いているため、統計上は海外投資家に入る。
大手の金融機関など日本の機関投資家は米英などの投資顧問会社にも資金を預けているが、この売買も外国人に分類される。世界運用最大手の米ブラックロックのように日本法人が日本株を運用しているケースを除き、ジャパンマネーが「海外投資家」として迂回する形で出たり入ったりする事例は少なくない。
同じ証券会社内のポジションの付け替えが外国人とカウントされることもある。震源裁定取引だ。例えば、外資系証券が海外拠点で日本株の「現物株買い、先物売り」のポジションを持っていたとする。それを拠点ごとのリスクを適正に管理する目的で日本に移す場合、日本の拠点は「現物買い、先物売り」となる一方、海外拠点は「現物売り、先物買い」の裁定取引が組まれる。
この時、日本の拠点からの注文は「証券会社の自己売買」に、海外の注文は「外国人投資家」に算入される。同じ証券会社の内部取引にすぎないのに、東証の統計上では外国人の売りが膨らんでいるように見えてしまう。
東証の投資部門の定義は1982年の集計開始からほぼ変わっていない。外国人投資家の大半は純粋な海外マネーだが、中にはコンピューターの自動取引の超高速取引(HFT)だったり、一部にジャパンマネーが含まれていたりする。一口に海外投資家といっても、その顔ぶれは多彩であることは知っておいた方がいい。