日本企業は1987年の過ちを 繰り返すのか?

”米中新冷戦” 時代の到来… 

日本企業は1987年の過ちを
繰り返すのか? 

1987年のある日…

 アメリカ議会の前で、議員たちは”東芝製”のラジカセを壊し、抗議するパフォーマンスを行った。

東西冷戦の真っ只中、東芝機械のCOCOM(対共産圏輸出統制委員会)違反事件が発生。その内容は、東芝の子会社「東芝機械」から共産圏に輸出された工作機械が、ソ連原子力潜水艦のスクリュー音を小さくするのに使われていたというもの。

意図的ではないにせよ、あろうことかアメリカの同盟国:日本の一企業が、敵国の軍事力増強に貢献してしまったのだ。

USA,,,Washington

 時のレーガン政権は激怒。東芝は当時の金額で”3兆円”の損害賠償という、巨額の制裁を被った。さらに、東芝本体をはじめとするグループ全体の製品について。米国への輸入禁止措置も出たため、一企業が起こした事件とはいえ、日米関係を揺るがす大問題であった。 

そして、あれから31年経った今。日本のメディアはその重要性をほとんど報じていないが、またも一部の愚かな日本企業が、東芝同じ過ちを繰り返そうとしている… 

Declaration of war...

 2018年10月4日。こちらも日本のTV・新聞では、あまり大きなニュースになっていないが、ワシントンにあるシンクタンク「ハドソン研究所」で、アメリカのペンス副大統領が歴史に残る大演説を行った。

ゆっくりと、とても聞き取りやすい口調で。これまでの中国との歩みを1つ1つ振り返りつつ、中国の民主化を望んでいたアメリカの期待は裏切られたこと。今やあらゆる分野で中国は、アメリカの覇権を脅かす”敵”になっていることを明言した。

アメリカの政治を40年以上分析してきた国際政治学者の藤井 厳喜氏の解説によれば、この演説は紛れもないアメリカの”宣戦布告”であり、世界が「米中新冷戦」という、新たな時代へ突入したことを決定付ける重要な出来事だという。(*藤井厳喜のワールドフォーキャスト 10月配信号より)

10月4日の演説で確定した「米中新冷戦」
〜中国はアメリカの覇権を脅かす敵である〜

Leave china...

 また、この演説でペンス副大統領は、中国が力を入れている「一帯一路構想」についても全面否定。実際に中国の高金利貸付によって港を奪われたスリランカ等の例を挙げ、一帯一路は、彼らの影響力を拡大するためだけの「借金漬け外交」であり、植民地主義的な政策だと非難した。

以前より直接中国の被害を受けていたアジア諸国は、すでに警戒を強めていたが、今回、アメリカの強硬姿勢を受け、これまで中国と仲の良かったドイツ・EUもこぞって中国離れを起こしている。
 さらにアメリカは、世界のスマホ販売シェアトップ10に入る中国企業「ファーウェイ」「ZTE」の2社が、機密情報を盗む機能を搭載し、中国共産党に流している疑惑があるとの理由で、市場からの締め出しを決定。 

藤井 厳喜氏はこの件について、”これはアメリカの強烈な国家意志の表れ。このような時に、もし日本企業が逆方向のことをしたら、どんな容赦ない制裁が待ち受けているかわからない。”と述べている。 

安倍総理の訪中に同席した500人の経済人…
彼らは中国で何を約束したのか?

 そんな中、10月25日に安倍総理は中国を公式訪問。習近平国家主席李克強首相と会談を行った。 

米中対立が明確になった今。日本政府を代表する立場の総理が「中国の一帯一路に協力を示す。」と、明言してしまえば、明らかにアメリカを敵に回すところだったが、総理は協力について明言せず。なんとか最低限の危機は回避した。 

一方で、”3兆円”という過去最大のスワップ契約を締結。アメリカが全力で中国経済を締め上げている中、いざという時に中国が外貨を調達できる助け舟を、日本だけが出してしまった形となった。これはのちにトランプ政権から、「アメリカへの裏切りである」と言われても言い逃れのできない問題である。 

しかし、それだけではない。本当の問題はここからだ...

Japan and China...

 今回、安倍総理の訪中には、500人を超える日本の経済人が同行。李首相によれば、今回、日中の企業間で約500件に及ぶ、総額180億ドル規模(約2兆50億円)の契約が結ばれたという。 

この件について藤井 厳喜氏は、総理のクールな態度を見る限り、巨大な中国市場での儲け話に目がくらみ、あまりに前のめりだった日本の財界を止めきれなかった。よって、もし一帯一路に協力したいところがあれば、それは「自己責任で勝手にやってくれ」というのが、総理が言外に意味しているところであろう。と分析している。

そして、ここで気をつけなくてはならないのが、冒頭で触れた東芝機械ココム違反事件」の再来である。  


Military affairs...

 藤井 厳喜氏はこう警告する… ”世界の先端を行く日本企業のハイテク技術の中には、軍事技術に転用できるものが数多くある。日本企業が”民生技術”として技術提供をしたとしても、大半の企業が共産党と繋がっている中国では、それが軍事転用されてしまう可能性は大いにある。

もしそうなれば、アメリカは容赦なくその企業を制裁するだろう。おそらく一切のドル建ての金融取引ができなくなるため、国際企業としては生命を絶たれるに等しい制裁となる。

”今、アメリカは自国企業と外国企業とを問わず、対中経済関係を希薄化させること。できれば解消することを求めている。特にハイテク分野においては、中国への技術流出は絶対に阻止したいというのがその本音である。

安倍総理としては、そのような制裁も十分承知の上で、対中協力に前のめりになる愚かな日本財界を突き放したのである。”(藤井厳喜のワールドフォーキャスト 10月配信号より)
 日本企業は愚かにも、1987年の東芝機械の失態を繰り返すのだろうか?... 中でも、特に心配しなくてはいけないのが、売上高:約29.5兆円の日本トップ企業「トヨタ自動車」の動向だ。 

トヨタ自動車が中国を「最重点地域」に?
某親中企業とトヨタ危険な関係

トヨタ自動車が、出遅れていた中国市場での巻き返しに本腰を入れ始めた。

〜中略〜

トヨタは中国の自動車大手との合弁会社が運営する広州市の工場に年約20万台を生産できる建屋を新設する計画だ。既存の建屋でも年約12万台分の能力増強を予定し、この工場の生産能力は、現状の年約50万台から2021年ごろに年80万~90万台程度へと増える見通しだ。

天津市の合弁工場でも年約12万台の能力増強を計画している。トヨタの中国全体での生産実績は17年に114万台だった。工場の拡張を通じて生産能力を21年ごろまでに約170万台へと引き上げ、200万台規模への上積みも視野に入れる。”

TOYOTA focus China...

”主力の米国や日本市場に陰りがみえるなか、トヨタは伸びしろがある中国を「最重点地域」と位置づける。豊田章男社長は5月の会見で「中国をはじめとした急激に伸びている市場があることを重要視している」と発言。

その直後、中国の李克強首相がトヨタ自動車北海道を訪れた際にも「世界で一番速く成長している中国に一生懸命ついていきたい」と話し、市場攻略に意欲を見せた。

Huge market...

 さらに、トヨタは自動運転等で「ソフトバンク」との提携を発表したが、ソフトバンクは名だたる”親中企業”のひとつ。中国大手IT企業「アリババ」の大株主であり、アメリカから締め出された「ファーウェイ」社とも、実は緊密な協力関係にある。実際、ソフトバンクは、機密情報が中国に盗まれると噂される同社の製品を、携帯ネットワークの基地局で利用している。さらに、プロ野球球団ソフトバンクホークス」の大スポンサーの1つはファーウェイである。

藤井 厳喜氏はトヨタソフトバンクの提携について、”このような背景があるソフトバンクと、日本の基幹産業であるトヨタが本格的な提携をするという。これはアメリカサイドから見れば、トヨタが親中反米に舵を切ったと見られても仕方がないだろう。トヨタの経営陣は、現在の国際情勢の潮流が全く見えていないようだ。” と警鐘を鳴らしている。(藤井厳喜のワールド・フォーキャスト 10月配信号より) 

果たして、トヨタ東芝機械の二の舞にならないと言えるだろうか? その時、日本の経済は… 日米関係はどうなってしまうのだろうか?... 

日本のトップ企業さえも国際情勢に逆行…
いったいなぜ、こんなことになってしまうのか?

 深刻な米中対立のさなか、日本を代表するトヨタ自動車でさえ、中国への協力を約束。その他の一流企業も、こぞって中国への投資に前のめりに…いったいなぜ、こんなことになってしまうのか。  

もちろん原因は1つではないが、1つ大きいと言えるのが、日本に流れている情報の質があまりにも低いこと。マスメディアを牛耳っている大手TV・新聞など、旧態然としたメディアの質が低いことが挙げられる。あろうことか、これらのメディアの一部には、中国と深く繋がっている会社もあり、われわれが判断を間違うような情報…中国にとって都合の良い情報を意図的に流すことさえあると言われている。 
事実、、朝日新聞毎日新聞日経新聞などの多くの新聞。そして大手TV局は、この時期「日中友好40周年」を引き合いに出し、今こそ中国と新たな関係を築くべきだと連日報道。今も毎日のように尖閣諸島沖のわが国の領海を、中国漁船が侵犯する中、友好、友好とあおり、今も中国には大きなビジネスチャンスがあるかのように伝えている。

米中貿易戦争についても、単なる”貿易摩擦”としか報道せず、同じ紙面で「米ドル依存は危険」「今こそ日中協力を」といった大学教授の記事を掲載する…

 日本を代表する大企業が、このような偏った報道を行うメディアからの情報を鵜呑みにする。その程度の情報収集・危機管理能力しかないとは信じたくないところだが、実際のところ大半は、本当にそうなのかもしれない。それはなぜか? 10月24日、ヤフーニュースにこんな見出しの記事が出た...

事実、、特に過剰なのは朝日新聞で、中には中国人が書いているのではないか? と思えるような論調の記事も時々見受けられる。(ちなみに朝日新聞は、中国の新聞社「人民日報」と業務提携をしている。)

「ネット時代到来、経団連会長の
執務室にパソコンを初導入」

経団連会長の執務室に初めてパソコンが導入されたという驚くべきニュースが飛び込んできました。

これまで経団連では紙ベースで仕事をしてきましたが、新しく会長に就任した中西宏明氏が電子メールでの業務実施を希望し、導入が決定したそうです。”
 経団連といえば、主に東証一部上場の、日本を代表する企業が集まる団体。そんな経団連でさえ、つい最近パソコンを導入したばかりというのだから、大企業トップの情報感度・リテラシーの低さを疑ってしまう。ただ、この情報を見る限りでは、いまだに新聞・TVが彼らの情報源の中心になっている可能性は高いと言えるだろう。(ちなみに経団連の第8代・第10代会長は「トヨタ自動車」の会長が務めている…)

そう考えると今回のように、日本の大企業だけが、現在の国際情勢が全く読めていないのも頷けてしまうのではないか。 世界が「米中新冷戦」という新たな局面に移った今。私たち日本人ひとりひとりが、質の低い情報を流すメディアに惑わされずに、質の高い情報を取ること。そして、”世界の正しい流れを読み解く力”を身につける必要に迫られているのではないだろうか。

これまでのように、ただ漫然と大手メディアの報道を見ているだけでは、表面的なことしかわからない。件名は報道していても、その出来事が世界に、日本にどう影響するのかを正しく語ってくれるところはほとんどない。ジャンクフードばかりを食べ続けていれば一生健康になれず、いずれ病気になってしまうように…質の悪い情報を取り続けていれば、一生世界の流れは読み解けない。いくら頑張って情報をとっても、賢くなることはできないだろう。
 
大企業のトップでさえも間違った情報源を読み、間違った判断を繰り返している中。質の低い情報源から情報を取り続けていれば、私たちの会社。私たち個人の人生さえも、同じように翻弄されてしまう可能性が高いだろう。 

藤井 厳喜の「ワールドフォーキャスト」編集部

バブル崩壊リーマンショック・トランプ当選...
次々予測を的中させる国際政治学者:藤井 厳喜とは?

現在70冊以上の書籍を出版。在米ユダヤ人パートナーとともに立ち上げたシンクタンクで、約40年...旧三井信託銀行日興証券など、一部の金融機関や大手企業・個人投資家を中心に、国際情勢・経済予測レポートを提供。

その一方で、「朝まで生テレビ」「ホンマでっかTV」「ニュース女子」「虎ノ門ニュース」などのTV・ラジオ番組にもレギュラー出演し、日本国民の情報感度を高める活動を続ける国際政治学者:藤井 厳喜。