水中でも画像を瞬時に送受信 島津製作所、光技術で高速無線

水中でも画像を瞬時に送受信 島津製作所、光技術で高速無線

エレクトロニクス
関西
2018/12/4 12:00
島津製作所は水中で利用できる高速無線通信システムを開発した。光技術を活用し、水中で画像や映像をリアルタイムで送受信できる。水中ロボットに搭載すれば、正確な位置や状況の把握が容易になり、日本の近海にも存在するメタンハイドレートなど海底資源の探索を効率化できる。まず2019年4月に10メートル程度の距離で通信できるシステムを販売する。
島津製作所半導体レーザーを使った無線通信技術を開発した
島津は半導体レーザーによる光技術を活用し、一般的な音波による水中無線に比べて通信速度を約1000倍の毎秒20メガビット(通信距離が120メートルの場合)に高めることに成功した。音波では写真を1枚送るのに10分程度かかるが、島津のシステムでは0.6秒に短縮できるという。
販売するシステムの価格は今後詰めるが、送受信機のセットで数千万円程度を見込んでいる。性能を高めた製品を順次投入する。
光技術を用いた水中の高速無線は、英国のソナーダイン社が発光ダイオード(LED)を使って実用化している。ただ、100メートル超の距離では半導体レーザーを使用する島津のシステムの方が通信速度が一段と速まる見込みという。
現在、大半の水中ロボットは音波による無線か、ケーブルを用いた有線を利用している。音波の場合、大容量のデータ通信が難しく、映像や画像をリアルタイムで送受信できない。一方、有線方式は大容量通信が可能なものの、ケーブルが海流によって流されやすく、操作性の面などで課題があった。
日本近海には「燃える氷」と呼ばれるメタンハイドレートのほか、コバルトやニッケルなどの複数の重要な資源が存在しているとみられる。資源開発などで自国の法令が適用できる排他的経済水域EEZ)の広さは世界6位で、低コストで効率よく海底を調査する技術が求められている。
米調査会社の予測によると、水中ロボットの世界市場は25年に17年比で約2.7倍の67億4000万ドル(約7600億円)まで拡大するとの見方もある。ロボットの需要が増えるとともに、無線通信システムなど周辺機器の市場も大きくなるとみられる。