糖尿病で筋肉減少のメカニズムを解明 神戸大グループ

糖尿病で筋肉減少のメカニズムを解明 神戸大グループ

 血糖値が上がると筋肉が減少するメカニズムを神戸大大学院の小川渉教授らの研究グループが解明した。血糖値の高い状態が続く糖尿病患者は、加齢で筋肉が衰え、ほかの病気や認知症になりやすく、今回の発見が患者の健康寿命を延ばす薬の開発につながると期待される。21日付の米科学誌電子版に掲載された。
 グループは、糖尿病になると筋肉に蓄積するタンパク質「KLF15」に着目。薬剤投与でマウスを糖尿病にすると筋肉量が約15%低下したが、筋肉にKLF15を持たないマウスでは低下が起こらなかった。筋肉の減少は従来、ホルモンの作用で起こると考えられていたが、実験の結果、血糖値の上昇でKLF15が増えることが原因と分かった。

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 一方、KLF15は正常時も筋肉で常に生成されていることから、同時にKLF15を分解する仕組みもあるとみて研究。タンパク質「WWP1」がこの役割を果たし、血糖値が上がると減少することを突きとめた。小川教授によると、WWP1とKLF15による筋肉減少のメカニズムはヒトにもあり、糖尿病以外でも作用するという。

 糖尿病に限らず、加齢などで筋肉や身体機能が衰える現象は「サルコペニア」と呼ばれる。高齢化が進む社会で健康寿命にかかわる課題として注目されるが、治療薬はない。小川教授は「今回のメカニズムに対応した薬が開発できれば、ギプス固定などで急に筋肉が落ちる場合も含め、糖尿病以外にも幅広く適用できる可能性が高い」と話している。