米中貿易協議、最終段階入り 3月下旬に正式合意も=関係者

米中貿易協議、最終段階入り 3月下旬に正式合意も=関係者

米が制裁を科しても報復しないよう中国に求めてもいる

トランプ米大統領(左)と中国の習主席
トランプ米大統領(左)と中国の習主席 Photo: nicolas asfouri/Agence France-Presse/Getty Images
 米中貿易協議は合意に向けた両政府の話し合いが最終段階に入っている。中国側は関税の引き下げに加え、米国から輸入する農産物や自動車製品などへの規制を緩和する方向。米国は昨年発動した中国製品への関税の多くを撤廃することを検討している。
 事情に詳しい関係者らによれば、2月にワシントンで開かれた協議を経て合意内容はまとまりつつある。ただし乗り越えなければならない課題もあるほか、両政府とも相手国に譲歩しすぎだとの反発が国内で広まる可能性がある。
 一方で事情に詳しい関係者らによると、依然ハードルは残るものの話し合いは進んでおり、3月27日頃に予定されている米中首脳会談で正式な合意が結ばれる可能性も出てきた。
 中国は合意の一環として、自動車合弁事業への外資出資に関する規制撤廃に向けた手続きの迅速化を約束する見込み。また輸入車にかけられている15%の関税を引き下げる意向も示している。
 中国はさらに、貿易不均衡是正を掲げるドナルド・トランプ米大統領にアピールするため、米国製品の輸入量も増やす予定。事情に詳しい関係者らによれば、その中には米シェニエール・エナジーから天然ガス180億ドル相当の購入も含まれている。
ライトハイザー米USTR代表(写真)は100ページ以上に及ぶ書類のうち30ページ近くは知的財産権の保護に関する規定だと話した(2月27日)
ライトハイザー米USTR代表(写真)は100ページ以上に及ぶ書類のうち30ページ近くは知的財産権の保護に関する規定だと話した(2月27日) Photo: Anna Moneymaker/Bloomberg News
 米国は国内企業、特に国営企業を優遇する中国政府の方針を非難しているが、この点については交渉が継続中。またロバート・ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表は先週、100ページ以上に及ぶ書類のうち、30ページ近くは知的財産権の保護に関する規定だと話していた。
 米中の交渉担当者はさらに、米企業からの苦情を解決するメカニズムの構築を目指している。協議中のプランでは、紛争を裁定するため両政府当局者による2国間会合を開くことになっている。話し合いが合意に至らなければ、米国は関税を課す可能性があるとライトハイザー氏は警告している。
 他の関係者によると、米国側は仮に米政府が制裁を科すとしても、中国は報復しないことに同意するよう求めている。中国側にとってこれは大きな譲歩となる。中国の交渉担当者は19世紀に欧米列強が同国に課した不平等な条約と同じ結果にならないようにしたいと話している。
 それでも米国の対中強硬派は、十分な効力をもつ強制措置ではない可能性があり、米国が終わりなき交渉に引きずり込まれることを懸念している。

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 「このプロセス全体がまやかしだ」。アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の中国専門家、テレク・シザーズ氏はこう指摘。米国は協議を続けるより一方的措置を講じることで、意思をより明確に行使できると主張する。
 米中交渉の「ワイルドカード」の1つが、ベトナムで開かれたトランプ氏と北朝鮮金正恩キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長の首脳会談が物別れに終わったことの影響だ。米当局者は、提案内容が不十分だと思えばトランプ氏は拒否するということを中国の習近平国家主席が学んだはずだと期待する。その一方で、逆の教訓を得た可能性もあると懸念する。つまりトランプ氏はどうしても成果が必要な状況に追い込まれたということだ。
 「ベトナムで合意に至らなかったことで、彼に対して中国と何らかの合意を結ぶ圧力が増している」。ワシントンのピーターソン国際経済研究所のフレッド・バーグステン所長はそう指摘する。