北九州市立大学、世界初!可視光でメタンをエタンと水素に、脱石油社会への技術

北九州市立大学、世界初!可視光でメタンをエタンと水素に、脱石油社会への技術

科学
北九州市立大学国際環境工学部の 天野史章 あまの ふみあき 准教授らの研究グループは、常温で青色の可視光を利用し、メタン(CH4)を直接、エタン(C2H6)と水素(H2)に変換できる新しい光電気化学反応プロセスを開発した。
 
光電気化学とは、電極に電流を流す代わりに光を照射することにより発生する化学反応のことである。光が照射される事により表面に電位差が生じ、化学反応が発生する。
 
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原典:Wikipedia
 
メタン(CH4)は、1個の炭素原子に4個の水素原子が結合した分子である。最も単純な構造の炭化水素だ。常温・常圧では無色・無臭の気体であり、毒性はない。融点は-183℃、沸点は-162℃。空気に対する比重は 0.555。
メタンは大量に存在する天然資源である。油田やガス田から採掘される。また、日本近海に大量に存在する「メタンハイドレート」の主成分でもある。
 
現在、メタンの大きな用途は、都市ガスなどの燃料用ガスと化学品である。
メタンを化学品として使用する場合には、複数段階の化学反応が必要だ。このため、メタンを化学品へと直接変換する化学プロセスの開発が望まれていた。
 
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メタンをエタンと水素に変換する「全固体型電気化学セル」のイメージ図、作成:素人が新聞記事書いてみた
 
同研究グループは、可視光照射下でメタンをエタンと水素に変換するために全固体型光電気化学セルを開発した。
WO3ナノ粒子電極にメタン(CH4)を供給し青色の可視光(波長450nm)を照射したところ、電圧1.2Vにおいて量子効率11%で光電流が発生した。生成物の分析の結果、炭素基準の選択率50%でエタンを生成したことがわかった。エネルギーの低い可視光の使用により、メタンの「ホモカップリング反応」を誘起できることが実証された。
また、対極では100%の電流効率で水素が発生した。メタン由来のプロトンプロトン交換膜を経由して対極へと移動、外部回路を経由した励起電子によって還元されていると考えられる。これは光電気化学反応により、メタンから水素を製造した「世界初」の報告例である。
 
要するに、今までには考えられないほど少ないエネルギーで、メタンからエタンと水素をつくることに成功したのである。
安価で大量の水素を製造することが可能になれば、燃料電池車(FCV)や燃料電池、水素発電システムなどを利用した「水素社会」の実現が可能となる。
これは脱石油社会への技術と言える。
だだし、まだ基礎研究の段階であるため、実用化できるか否かは未知数である。
・・・が、夢のある技術ではある。