睡眠学習、外国語の習得に効果的か
睡眠学習、外国語の習得に効果的か
寝ている時間に新しいことが学べると信じる神経科学者が増えている
大半の人々は、1日16時間起きていても重要な仕事を片付ける時間が足りず、ましてや知識の習得にまで手が回らない。だが新たな見方を示す神経科学者が増えている。睡眠時間は単に記憶を定着させるだけでなく、全く新しいこと、例えば外国語を学ぶのに適しているというのだ。
睡眠学習とは
ハフィーズ博士によると、科学者らが数十年に及ぶ研究で達した結論はこうなる。人は一日中、脳に刺激を浴び続けるが、脳は睡眠中にそうした情報をすべてフィルターにかける。「コンピューターがシャッフルするように、ごみ、ごみ、ごみ、重要、ごみなどと選別する」と同氏は言う。「邪魔ものを排除した後、脳は情報を記号化し、その記憶や情報がどれほど重要かを決定する」
1965年に発表された脳波(EEG)を使った研究では、睡眠学習が実際に起きることが明らかになった。それ以降に行われた研究から、特定の睡眠サイクル(夢を見ていない時)において主に記憶や学習をつかさどる脳の部分である「海馬」が活性化することがわかった。
ハフィーズ博士によると、心拍数が遅くなり、体温が低下する第2段階のノンレム睡眠期に、覚醒状態との間を細かく行き来する「神経振動活動」によってこうした状態が生じる。この「睡眠紡錘(ぼうすい)波」(糸巻きの形をした脳波が出現する)は0.5~2秒間続き、われわれの感覚処理や長期的な記憶強化に不可欠な役割を果たすことがわかっている。
「紡錘波がアップ(覚醒状態)のとき、脳がさまざまな部分と意思疎通するのを助け、データを脳の正しい部分に伝達する」とハフィーズ博士は言う。見方を変えると、「アップ」は脳がふと一息つく瞬間であり、後で思い出せるように適当な場所に情報を保管したと考えることもできる。
「Guga」=ゾウと覚えさせる
学術専門誌「セレブラル・コーテックス(大脳皮質の意)」に掲載されたチューリヒ大学の最近の研究では、ドイツ人学生68人に対し、午後11時までに新しいオランダ語の単語をいくつか覚えるように頼んだ。学生の半分はそれらの単語の録音を再生しながら眠ることを許された。一方、残りの半分は起きたまま単語に耳を傾けた。
3時間後の午前2時、68人に記憶力テストを行った。その結果、眠りながら単語を聞いた学生の方が、眠らなかった学生よりはるかによく覚えていた。
起きていた学生の成績不良の原因が睡眠不足でないことを示すため、研究者らはEEGを計測した。「臨床的に有意な結果が得られた」とハフィーズ博士は言う。
それは参加者が眠っている間、でたらめな造語とその意味を聞かせるという実験だ。紡錘波の「アップ」の時にその意味を2~4回再生すると、記憶力が高まったという。「睡眠中に『guga』の意味はゾウだと聞かされると、目が覚めた時に『guga』は何か大きいものに関係していると思い出すのだ」
少なくとも他の2つの研究では、参加者の睡眠中に匂いや音声を新しい情報と結びつける条件付けをした。そうすると参加者は目覚めた時、睡眠中に新しい知識に触れたことを知らないまま、その内容が脳裏によみがえったのだ。
同博士は統合失調症の人には睡眠紡錘波がほとんど現れず、女性は男性よりも紡錘波が多く現れる傾向があると説明した。多くの神経心理学者は脳内で生成されるエストロゲン(女性ホルモン)が記憶強化に重要な働きをするのではないかとの推論を立てている。
紡錘波を増やすのがカギ