睡眠中に記憶を強化 米グループが実験
睡眠中に記憶を強化 米グループが実験
眠っている間に英語を聞くことで脳が学習し、目覚めたときにはペラペラになっている──。そんな「睡眠学習」の試みは米国で1920年代からブームになったが、その後、睡眠中に聞いたことは記憶されないことが実験で判明し、期待は急速にしぼんだ。だが最近の脳神経科学の研究から、睡眠は違う形で記憶を強化していることがわかってきた。
人は起きている間に得た記憶を、眠っている間に脳内で再生させることでしっかり定着させている。米ノースウェスタン大学のケン・パラー教授らのグループは、寝ている間にある音を聞かせることで、狙った記憶をより深く刻み込む実験に成功した。
まず被験者に、パソコンの画面に出てくる50種類の物の位置を覚えてもらった。その際、ネコなら「ニャー」という鳴き声、やかんなら「ピー」という音など、対象物と関係のある音を聞かせた。その後、被験者に仮眠を取ってもらい、ノンレム睡眠の間に起きる深い睡眠「徐波睡眠」の間に、先ほどの音を聞かせた。
目覚めた被験者たちに物の位置を聞くと、眠っている間に聞いた音に関連する物についてはよく記憶していた。「ニャー」という声を聞いた人はネコの場所を、「ピー」という笛を聞いた人はやかんの場所を思い出しやすかった。睡眠中に聞いた音が、その音に関連する物についての空間記憶を活性化し、定着させたとみられる。
これに先立って、独リューベック大学のグループが行った実験では、被験者に物の位置を記憶してもらいながら、バラの香りをかがせた。その後、眠っている間に一部の人に再びバラの香りをかがせたところ、匂いの刺激を受けた人は、受けなかった人より正確に物の位置を思い出すことができた。