「アレ何だっけ」が増えた? 脳の老化をテストで点検 脳の老化対策(上)

「アレ何だっけ」が増えた? 脳の老化をテストで点検 脳の老化対策(上)

日経おとなのOFF

2019/5/18
名前や数字がすぐに出てこない「アレ何だっけ?」。どうにかできないものでしょうか。写真はイメージ=(c)lithian-123RF
加齢とともに増えてきた、知っている名前や数字がすぐに出てこない「アレ何だっけ?」現象。どうしたら、いつまでも働きモノの脳でいられるのか。医師の長谷川嘉哉さんに聞いた。
◇  ◇  ◇
人の名前が出てこない、大事な数字を忘れる。なぜ、加齢とともに「アレ何だっけ?」は増えるのだろうか。
脳全体には千数百億個もの神経細胞があり、それらがネットワークをつくっている。加齢に伴う神経細胞の死滅や、使われないネットワークの縮小により、脳は少しずつ萎縮していく。「個人差や部位による差はありますが、特に萎縮が早いのが前頭葉です」と、認知症や脳のリハビリに詳しい医師の長谷川嘉哉さんは言う。
ここには「ワーキングメモリ」(作業記憶)という、入ってきた情報を一時的に保存して他の情報と組み合わせ、情報に優先順位をつけて処理する機能がある。いわば脳の司令塔だ。しかし、「その処理能力は加齢とともに衰え、50代ではピーク時よりも30%ほど低下します」
脳は入ってきたさまざまな情報を短期記憶として仮置きしておくが、繰り返し使われることで、海馬が重要な情報だと判断して、長期記憶に移される。その橋渡し役をしているのもワーキングメモリ。このため、ワーキングメモリの働きが低下すると、必要な情報をうまく引き出せなくなるのだ。
まずは2つのテストで、脳の老化の危険度と前頭葉機能をチェックしてみてほしい。
(※テスト2の正解は次ページをご覧ください。)

テスト1と2の結果が思わしくなくても、心配には及ばない。「最新の脳科学では、脳への適切な刺激と生活習慣の改善によって、何歳になっても脳のパフォーマンスは向上することが分かっています」と長谷川さん。
人は20歳を超えると、1日10万個の脳の神経細胞が失われるとされている。このため、加齢とともに脳は衰える一方とかつては思われていたが、脳全体の神経細胞から見ると、何十年と減り続けてもわずかなもの。しかも、「神経細胞は高齢になっても新生することが分かってきました。さらに、神経細胞のネットワークは筋肉と同様、使えば使うほど鍛えられ、増えます」。鍛えることで、低下しがちな前頭前野の機能やワーキングメモリの働きが向上するのだ。
そのためには、どんな脳トレが有効なのか。それについては明日(2019年5月19日)公開の記事でお伝えする。
◇◇加齢で脳はどう変化する?◇◇

【change1 脳が少しずつ萎縮】
脳の一部は年齢とともに少しずつ萎縮していく。萎縮の早さや程度には個人差があり、部位によっても違う。原因は神経細胞数の減少。

【change2 前頭前野の機能が低下】
特に前頭葉の前方の萎縮が早い。前頭葉は脳の司令塔とも呼ばれ、感情や意欲、柔軟性などを司つかさどる部分で、衰えると怒りっぽくなる。

【change3 ワーキングメモリの機能がダウン】
前頭前野にあるワーキングメモリの処理能力が低下。個人差があるが、50代に入る頃には、最盛期に比べて30%ほど低下する。

(文 中城邦子、写真 竹井俊晴、イラスト 村林タカノブ)
長谷川嘉哉さん
認知症専門医。1966年、愛知県生まれ。名古屋市立大学医学部卒業。医学博士。毎月1000人の認知症患者を診察する認知症専門医。脳リハビリにも詳しく、講演でも活躍。著書は『一生使える脳』(PHP新書)ほか。


[日経おとなのOFF2018年11月号記事を再構成]