牽引体験してきた! 車中泊するならキャンピングトレーラーもイイんじゃない!?
牽引体験してきた! 車中泊するならキャンピングトレーラーもイイんじゃない!?
2019.5.20
アウトドアブームにともない、車中泊できるクルマの人気が上昇中。フルフラットな居住空間が作れる自動車やキャンピングカーが中心だが、すでに自動車を所有しているなら「キャンピングトレーラー」という選択肢もある。この特集ではキャンピングトレーラーの基本的な解説はもちろん、免許や維持費のこと、筆者が実際に体験してきた運転のコツなどについて紹介しよう。
キャンピングトレーラーって、どんなもの?
トレーラーというと、一般的にはトラックの荷台部分に車輪が付いたようなもので、動力を備えていないため、牽引車で引いて運搬する。そのトレーラーに壁や屋根を付け、ソファなどの内装を施し、寝泊まりできるようにしたのが「キャンピングトレーラー」だ。簡単に言ってしまえば、キャンピングカーの住居空間と自動車が分離したようなもので、キャンプなどに出かける際には自動車にトレーラーを連結して引いて行く。トレーラーの重量により例外はあるが、牽引する自動車は特別な車種を購入する必要はなく、いつも乗っている自動車でOK。トレーラーと自動車は簡単に切り離しできるので、普段は自動車だけで使うことができるのが大きなメリットだ。また、トレーラーを牽引せず、駐車している間は“離れ”のように使うこともできる。
内装を含むトレーラーの総重量が750kg以下であれば、2,000ccクラスの自動車で牽引可能。もちろん、大きな排気量の自動車のほうがラクに牽引できるが、キャンピングトレーラーのオーナーの中には「プリウス」のようなハイブリッド車で牽引している人もいるという
牽引できるように、自動車のリア部分にヒッチメンバー(トレーラーヒッチと呼ぶこともある)を装着しなければならない。自動車から電源コードを引き出したりしなければならないので、取り付けは基本的に工場やキャンピングトレーラーを購入したショップに依頼する。車種ごとに専用設計のヒッチメンバーが用意されており、ヒッチメンバーによって牽引可能な重量も違ってくるので注意しよう
牽引する時は、自動車に取り付けたヒッチメンバーにトレーラーの連結部を自分でジョイントする。自動車とトレーラーの電気系統をつなぐため、電源コードも接続しなければならないが、慣れれば連結作業はトータル3分ほどで完了可能
キャンピングトレーラー内は、キャンピングカーと同様にオプションを選んで装備を充実させていくことができる。壁や屋根が付いた荷台のようなものに車輪が付いた状態で販売されていることもあるが、多くは、ある程度キャンピング仕様にされており、それをもとに細かいオーダーを行う。もちろん、その他のオプションに変更・追加することも可能だ。なお、自動車から出した電源コードを接続すると前述したが、この電力はあくまでもトレーラー後部のブレーキランプを点灯させるためのもの。トレーラー内で冷蔵庫やルームエアコンをはじめとする電化製品を使うにはサブバッテリーが必要となる。豪華な装備を付ければ、その分費用は高くなるが、それでも自動車本体の価格は含まれないので、居住スペースや装備が同じくらいのキャンピングカーと比べて1/2~1/3の予算で収められるのが大きな魅力だ。また、エンジンなど整備費用がかかりやすい部分がないため、メンテナンス費用も抑えられる。劣化する部分も少なく、走行距離が伸びても交換が必要となるのはタイヤくらいなので、ある程度使用したあとに手放しても価格が落ちにくいのもポイントだ。
ソファを展開してベッドにするタイプもあるが、大型のキャンピングトレーラーは、ソファやテーブルなどは別に作り付けのベッドが設置されていることが多い
トレーラーのサイズは、就寝人数2人くらいのコンパクトなものから、ゆうに10人以上寝られるのではないかという大型のものまでさまざま。個性的な見た目のものが多いのも魅力だ
なお、キャンピングトレーラーは一般的に、キャンピングカーを手がける架装メーカー(キャンピングカーメーカーと言うこともある)で販売されている。
免許、保険、車検は、どうなる?
自動車で牽引するキャンピングトレーラーは「牽引免許」が必要だと思われるかもしれないが、牽引するものの重量が750kg以下であれば普通自動車免許で問題ない。キャンピングトレーラーの中にも牽引免許が必要な大型クラスもあるが、人気が高いのは、やはり普通自動車免許で牽引できるクラスだ。ただ、キャンピングトレーラーを販売するメーカーに聞いた話によると、1台目に750kg以下のものを購入しても短期間で750kg以上の大きなクラスに買い換えるオーナーが多いとのこと。これは、大きなトレーラーのほうが居住性が高く、運転もしやすいからなのだそう。実際、牽引免許がいらないクラスであっても、運転する前には練習が必要。普通自動車免許を持っていれば牽引免許は10万円前後で取得できることから、牽引の練習も兼ねて牽引免許を取るために教習所に通う人もけっこう多いのだという。
就寝人数は小型クラスで足りるが、シャワーやトイレ、キッチンなどを設置したり、リビングスペースを広く取ったりできるように大型クラスを選ぶオーナーも多い
エンジンは付いていないものの、キャンピングトレーラーは車両扱いとなるため、車庫証明が必要となる(地域によっては軽自動車あつかいのサイズであれば不要なことも)。車庫証明は、所有者の本拠地(多くの場合は自宅)から2km以内で駐車場を借りなければならないが、キャンピングトレーラーはそれほど頻繁に使うこともないので、自宅から多少離れた安い駐車場を借りて置いておくのもいいだろう。
当然だが、車両となるため、キャンピングトレーラーも車検は必須。任意保険に関しては、対人・対物への保障は運転している自動車にかけている保険でカバーできることが多いようだが、保険会社によっては異なる場合もあるので、事前に確認しておこう。ただ、トレーラーの破損については自動車の車両保険ではカバーされない。トレーラー自体にかけられる車両保険も少ないながら存在するので、加入しておくと安心だ。
運転は難しい? 実際に牽引して確かめてみた!
サイズの小さいクラスなら普通自動車免許で運転できるといっても、トレーラーを牽引するのは難しそうな気がする。もちろん、事前に練習するとはいえ、初回の難易度がわからないと“やってみよう!”という気持ちにもならないかもしれない。そこで、経験ゼロの筆者がキャンピングトレーラーの牽引を体験してみた。
なお、牽引するのはタコス「MIMIe 310」。就寝人数は大人3人+子ども1人だが、オプションで大人4人が寝られるようにすることも可能。サブバッテリーや40Lの冷蔵庫、寒い場所で泊まる際に使用するFFヒーターが標準装備され、エアコンやソーラーパネル、サイドオーニングに装着できる専用テントなど豊富なオプションも用意されている。価格は178万円~。
タコス「MIMIe 310」で牽引体験! 断熱性の高いFRPパネルをボディに採用している
ウッディーな内装なので、リラックスして過ごせそう。テーブルを囲むようなコの字型のソファは、小さな子どものいるファミリー層に人気なのだとか
ソファを展開すればベッドに。オプションで就寝人数を増やす場合、右側のクローゼットと壁の間に2段ベッドのようになるものを設置するのだそう
開閉可能なシンクや排水タンクも完備。コンロは市販のカセットコンロを使用する
キャンピングカーに使われるカセット式のトイレを設置できるマルチルームも備えられている
筆者の家族は大人2人、子ども2人なので、オプションを追加すればMIMIe 310はピッタリ! これが運転できるようになれば、キャンピングトレーラーのある生活も検討してみたいところだ。
MIMIe 310の重量は740kgなので、牽引免許のない筆者でも問題なし! 今回は三菱「パジェロ」で牽引する
運転してみると、前に進む分にはそれほど違和感はない。少し大きな自動車を運転するくらいの心づもりでいれば十分だ。もちろん、何も引いていない時と同じように高速道路を飛ばしたり、スピードを出してカーブを曲がったりするような運転はご法度だが、それ以外は、狭い曲がり角を曲がる際に少し大回りしたり、運転中にバックミラーでトレーラーの動きを確認するように意識した程度で難なく走れてしまった。前進だけであれば、10分もあればマスターできるだろう。
交通の少ない道での試乗だったものの、道幅が狭いため、はじめは少々緊張ぎみ。ただ、少し運転すると慣れてきて、トレーラーの動きが意識できるようになってきた
わりとすんなりと前に進めたので、キャンピングトレーラーの運転は意外と簡単なのかもと思ったのもつかの間、バックが難しかった。普通の自動車でのバックは、前進とは逆方向にハンドルを切ればいいだけなのだが、トレーラーを牽引している際は、最初にトレーラーを進みたい方向に向けてからハンドルを切り直さねばならない。しかも、トレーラーの向きがキマっても、自動車とトレーラーの角度がつきすぎると、まっすぐトレーラーが進んでくれず、駐車の枠からはみ出してしまう。つまり、進みたい方向にトレーラーが動くように、トレーラーの向きを調整しつつ、きちんと適切な方向に押せる角度に自動車を持ってくるという操作を行わねばならないのだ。30分程度の練習を2~3回繰り返せば感覚がつかめるらしいが、安全に練習できる場所はなかなかないので、練習代わりに教習所に通って牽引免許を取得するのが賢い方法かも。
車内から見て、これくらいの角度になってしまうと、自動車をバックさせてもトレーラーはまっすぐ後ろに進んでくれない。ここから微調整で立て直すのは難しいので、いったん、自動車とトレーラーが一直線になるように前進してから、バックをやり直したほうがいい
※写真は、牽引体験したトレーラーとは異なります
注目のキャンピングトレーラーを紹介!
牽引体験のところでタコス「MIMIe 310」を紹介したが、ほかにも注目のキャンピングトレーラーがあるのでピックアップしてみた。
Stage21「幌馬車くん」
キャンピングトレーラー専用に作られていないため、標準仕様は屋根付きのトレーラーに出入口用ドアが付いたシンプルなもの。荷物の運搬用として使える「カーゴトレーラー」仕様、バイクやゴーカートなどを保管・運搬できる「トランスポーター」仕様など、目的に合わせてカスタマイズしていくコンセプトとなっており、床張りしたり、ソファなどを設置すればキャンピング仕様になる。トレーラーの重量は約250kgなので、牽引免許は不要。
キャンピング仕様の「幌馬車くん」。窓やサイドドアはオプション。標準仕様の価格は99万円~と格安だ
後方のドアは標準で付いているもの。網戸も装備されているので、ドアを閉めたまま通気性を高めることもできる。また、リア側の壁をハッチのようにすべて開くことも可能だ
内装の一例だが、大人2人が就寝できる。この仕様で価格は188万8100円
トレガノ「エメロード406」
従来のキャンピングトレーラーは、調理やヒーターにプロパンガスを用いるものが多かったが、昨今は充填販売に対応してくれる業者が減りつつあるため、「エメロード406」は灯油や電気を使うシステムを構築。サブバッテリーの残量を把握できるバッテリーモニターも搭載されている。なお、キャンピングトレーラーの本場とも呼べるヨーロッパ製だけに、耐久性の高さや設計のよさは折り紙付き。輸入販売しているインディアナRVが設計段階から関わり、日本国内で使いやすいようにアレンジしているので使い勝手もいい。
日本の道路事情に合わせて、出入口のドアは左側に装備。就寝人数は4~5人で、価格は260万円~。重量は約750kgなので、牽引免許は不要だ。なお、写真のサイドオーニングはオプション
コの字型のソファは、展開すると2~3人が寝られるベッドとなる
後方にもソファがあり、展開すると2段ベッドになる
トイレとシャワーは同じスペースに設置。このほか、車外にもシャワーが装備されているので、外で汚れた体や物は車内に入れる前にキレイにできる
Hobby「390SF On Tuor」
快適な旅を目指すなら、牽引免許が必要なクラスのものがいい。このクラスでの売れ筋はヨーロッパ製のものが多く、ドイツのHobby「390SF On Tuor」は価格が308万円~とリーズナブルながら、二重ガラスで断熱性を高めた窓や、通気性を高めるために天井に装備されたベンチレーションなど、装備がリッチな点が高く評価されている。
写真では伝わりづらいが、重量が約1,025kgあるのでひと目で750kg以下のクラスとはサイズ感が異なる。就寝人数は4人なので、くつろげるスペースはかなり広い
ソファやテーブルの質感も、牽引免許不要のクラスに比べるとワンランク上の仕上がり。ちょっとした高級ホテル並みだ
就寝スペースには、作り付けのダブルベッドを設置。車幅があるので車体に対して横向きに寝てもきゅうくつではない
トイレもカセット式ではなく、作り付け。シャワーは同じスペースを共用している
エアストリーム「Flying Cloud」「Basecamp」
キャンピングトレーラーの代名詞的な存在、アメリカのエアストリームのものは金属がむき出しの丸みを帯びたデザインが多い。通常、キャンピングトレーラーは壁と家具が一体となった設計となっているが、エアストリームでは外側の強固なシェルを先に造ってからベッドなどを設置している。そのため、シェルの耐久性が非常に高いうえに、あとから内装を自由にカスタマイズできるので、家族構成やライフスタイルが変わった際に家具を変更することも可能。このような理由から長く使うことができるので、本国アメリカでは2世代にわたって使用されているという。価格はそれなりに高価だが、長く使えることを考慮すればコストパフォーマンスは高いといえる。
複数ラインアップされているが、日本で販売されているのはすべて金属がむき出しになったデザインのもの。写真は「Flying Cloud」シリーズで、就寝可能人数4人の「19フィート」から7人まで寝られる「30フィートFB」まで19モデルが用意されている
大型モデルの多いエアストリーム製の中で、もっとも小型なモデルが「Basecamp」。就寝人数は2人だが、重量が1,250kgあるので牽引免許は必要だ。
コンパクトになっても、ややラウンドした形状と外板にエアストリームらしさが残る。価格は696万円~
内装のクオリティも高い。ソファを展開するとベッドになる
キッチンスペースもラグジュアリー。高級コテージに宿泊しているような気分が味わえそう
カメラなどのデジタル・ガジェットと、クルマ・バイク・自転車などの乗り物を中心に、雑誌やWebで記事を執筆。EVなど電気で動く乗り物が好き。