電柱をEV充電の拠点に 東電、普及へコスト半減

電柱をEV充電の拠点に 東電、普及へコスト半減
【イブニングスクープ】

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2019/6/11 18:00 日本経済新聞 電子版
東京電力ホールディングスは、電気自動車(EV)向けの充電器事業に本格的に乗り出す。電柱を活用し急速充電器の設置コストが従来の半分の工法を開発した。まず首都圏で100台を設置しEVの普及をふまえ数百台に増やす。国内の急速充電器の設置台数は8千台にとどまるが、既存インフラを使った低コストの充電器が増えればEV普及を促すことになりそうだ。
欧州では独エーオンや伊エネルなどの電力大手が各地に充電器を整備し、欧州自動車メーカーのEV戦略に呼応している。日本でもトヨタ自動車が2025年にEV販売を大幅に増やす目標を打ち出すなど自動車各社が電動車の拡大に動き出した。東電はインフラの整備を急ぎ、売電収入で収益を得る。
東電は独自の工法で、電柱に充電器をぴったりと固定する工法を開発し特許を取得した。急速充電器は短い時間で一気に電気を流すため太い電線が必要で、一般的には電柱から地中を掘って充電拠点に設置する。東電の方式は電線を電柱に沿わせてつなげ、スペースも少なくて済む。工事費用は通常の300万円程度から半減できるという。
東京電力はEV充電器の工事費を半分程度に抑え、首都圏で普及を後押ししていく
東京電力はEV充電器の工事費を半分程度に抑え、首都圏で普及を後押ししていく
東電はまず管内で展開し、他の電力会社の電柱での設置も検討する。宅配便などの業務車両にEVを導入する企業に対し、設置場所を助言するサービスも始める。充電しながら集配エリアを効率的に回るといった最適な設置場所を分析する。東電が土地の所有者とも交渉し、充電器の設置を働きかける。充電器向けの割安な電気料金を設定することも検討する。
日本発の自動車向け急速充電規格「CHAdeMO(チャデモ)」の普及を目指すチャデモ協議会(東京・港)によると、国内の急速充電器は約8千台にとどまる。EVの普及には急速充電器の拡大が不可欠で、東電は工事からコンサルティングまで一貫して手掛けコストを抑える。
東電は電力の全面自由化の影響で管内の顧客を奪われ、小売事業の収益が厳しい。同事業の19年3月期の経常利益は前の期比37%減の727億円まで落ち込んだ。普及が見込まれるEV充電を通じて収益源を広げる計画だ。