日清紡、白金使わぬ燃料電池 材料費は数千分の1

日清紡、白金使わぬ燃料電池 材料費は数千分の1

2017/9/13 1:02
 日清紡ホールディングスは白金を使わない燃料電池用の触媒の実用化に世界ではじめて成功した。価格の高い白金の代わりに炭素を使うことで材料コストを数千分の1程度に減らすことができる。燃料電池車は電池価格の高さがネックだった。新材料の開発で、電気自動車に比べ遅れていた燃料電池車の普及に弾みがつく可能性がある。

 水素と酸素を反応させて電気を作る燃料電池には、酸素を還元する電極が入っている。電極には白金の触媒が必要だった。日清紡は白金を「カーボンアロイ」という炭素の触媒に代替することに成功した。炭素を焼く工程を工夫し、酸素還元を活性化させる分子構造を作り出した。発電効率は白金とほぼ同等という。

 日清紡はまずカナダの燃料電池大手バラード・パワー・システムズに、出力30ワットの電池に使う触媒を供給する。バラードは携帯型電子機器に使う電池として2017年12月に販売する。出力30ワットはスマートフォン6台分の充電容量に相当する。

 日清紡燃料電池車向け電池にもカーボンアロイの採用を狙う。米エネルギー省によると、FCV1台当たりの触媒コストは現在、3650ドル(約40万円)で、電池内部の部品コストの40~45%を占める。価格が1グラム4000円程度の白金に代わり、1グラム1円に満たない炭素が使われれば、価格は大幅に下がる。南アフリカなど一部に偏在している白金に比べ、調達も安定する見込みだ。